豚は牛や山羊よりも口蹄疫ウイルスを容易に伝播させる

要約

口蹄疫ウイルス接種豚の同居牛や同居山羊は全頭感染するが、ウイルス接種牛の同居山羊や同居豚、ウイルス接種山羊の同居牛や同居豚は全頭感染しない。すなわち豚は、牛や山羊よりも異なる動物種へ容易に口蹄疫ウイルスを伝播させることが示唆される。

  • キーワード:口蹄疫ウイルス、水平伝播、感染試験
  • 担当:動物衛生研究部門・越境性感染症研究領域・口蹄疫ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-7895
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

口蹄疫ウイルスは、牛、緬山羊および豚等の偶蹄類動物に感染するが、動物種により感受性、すなわち感染しやすさは様々である。通常、牛や緬山羊等の反芻動物は、豚よりも少ない量のウイルスで感染する。一方豚は、ウイルス感染後に、反芻動物よりも多くの量のウイルスを排泄する。そのため、口蹄疫の発生や広がりは、複数の動物種が、様々な密度で飼育されている農場や地域においては複雑となる可能性がある。
そこで本研究においては、異なる動物種間の感染試験を行い、動物種に応じた適切な防疫対応を考える上での基礎的知見を得ることを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 口蹄疫ウイルスO/JPN/2010株接種豚は、ウイルス接種牛および接種山羊よりも長い日数ウイルスを唾液中に排泄する(表1)。
  • ウイルス接種豚は、ウイルス接種牛や接種山羊よりも多くの量のウイルスを唾液中に排泄する(表2)。一方、ウイルス接種牛は、ウイルス接種豚よりも多くの量のウイルスを鼻汁中に排泄する(表2)。
  • ウイルス接種牛の同居山羊4頭中1頭および同居豚4頭中1頭、ウイルス接種山羊の同居牛2頭中1頭および同居豚4頭中4頭においては、感染が起こらない(表3)。
  • ウイルス接種豚の同居牛2頭中2頭および同居山羊4頭中4頭全てにおいて、感染が起こる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 牛や山羊よりも豚の方が感染源になる可能性が高いことから、口蹄疫の発生時には養豚農家への防疫対応を優先するべきと考えられる。

具体的データ

表1 ウイルス接種動物の臨床材料へのウイルス排泄日数,表2 ウイルス接種動物の臨床材料からの相対ウイルス排泄量,表3 異種動物間における同居感染の成立率

その他

  • 予算区分:委託プロ(食の安全・動物衛生プロ)
  • 研究期間:2014~2016年度
  • 研究担当者:深井克彦、西達也、森岡一樹、山田学、吉田和生、山川睦
  • 発表論文等:Fukai K. et al. (2019) Transbound. Emerg. Dis. 67(1):223-233.http://doi.org/10.1111/tbed.13344