渡り鳥の飛行経路に沿った鳥インフルエンザウイルスの大陸内および大陸間への拡散
要約
N6亜型鳥インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ遺伝子を地理的・系統的に解析することで、ウイルスの拡散に渡り鳥の移動が関与していること、また、長距離の拡散においては複数の飛行経路が重なっている地点が重要であることを明らかにした。
- キーワード:鳥インフルエンザウイルス、渡り鳥、飛行経路、地理系統解析、ノイラミニダーゼ
- 担当:動物衛生研究部門・越境性感染症研究領域・インフルエンザユニット
- 代表連絡先:電話 029-838-7895
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
2017-2018年冬季に日本で発生した高病原性鳥インフルエンザの原因となったH5N6亜型高病原性鳥インフルエンザウイルスは、過去にアジアで流行していたH5亜型高病原性鳥インフルエンザウイルスと野鳥由来のN6亜型鳥インフルエンザウイルスの遺伝子再集合体であった。また、このN6遺伝子を有するH5N6亜型高病原性鳥インフルエンザウイルスは、同シーズンにヨーロッパでも分離されたことから、ウイルスが長距離に拡散したことが示唆された。本研究では、2017-2018年冬季のH5N6亜型高病原性鳥インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ遺伝子を含む世界中の鳥インフルエンザウイルスのN6遺伝子を地理的・系統的に解析することで、ウイルスの拡散動態ならびに渡り鳥の移動との関連性を明らかにすることを目的とした。
成果の内容・特徴
- 2018年1月の高病原性鳥インフルエンザ発生原因となったH5N6亜型鳥インフルエンザウイルス(H5N6HPAIV香川株)のN6遺伝子と、データベース(GISAID)に登録されている全てのN6遺伝子と系統解析により、2016-2017年冬季にヨーロッパで分離されたH5N6HPAIVヨーロッパ株とHxN6AIVがシベリアで遺伝子再集合を起こし、日本とヨーロッパに拡散したことが示される。(図1)。
- 近縁なN6遺伝子を有する鳥インフルエンザウイルスが、ユーラシア大陸内だけでなくユーラシア大陸―北アメリカ大陸間、ユーラシア大陸―アフリカ大陸間の長距離を拡散している。
- 鳥インフルエンザウイルスの広範囲拡散は渡り鳥の飛行経路が関与しており、複数の飛行経路が重なる地点がウイルス拡散の中継点であることが示唆される(図2)。
成果の活用面・留意点
- この成果は、鳥インフルエンザウイルスの拡散と渡り鳥との関連を強く示すものである。
- 日本国内への侵入を防ぐためには、日本と飛行経路が重なっている地域の高病原性鳥インフルエンザ発生状況ならびに国外の鳥インフルエンザウイルスの最新情報を収集していく必要がある。
具体的データ

その他
- 予算区分:競争的資金(SICORP)
- 研究期間:2018~2019年度
- 研究担当者:
峯淳貴、内田裕子、Kirill Sharshov(FRCFTM, Russia)、Ivan Sobolev(FRCFTM, Russia)、Alexander Shestopalov(FRCFTM, Russia)、西藤岳彦
- 発表論文等:Mine J. et al. (2019) PLoS One 14, e0218506.