豚の音声センサの開発とそれを活用した豚呼吸器病の検出

要約

体内伝導音を採取できるセンサによって、子豚の音声データを収録できる。PRRSウイルスを接種した子豚では間質性肺炎により7日前後で呼吸音の強勢が観察されるが、音声センサデータを解析すると、接種3日後から異常が検知され、呼吸器病の早期発見システムへの応用が期待できる。

  • キーワード:豚呼吸器病、早期発見、音声センサ、PRRS
  • 担当:動物衛生研究部門・病態研究領域・寒地酪農衛生ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-7895
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

豚では豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)等の呼吸器病の蔓延による経済損失が大きな問題となっている。一方、省力化が求められる状況下において、多頭数の豚群から人の観察によって個々の疾病兆候を早期に発見することは困難である。この問題を解決するため、センサによりバイタルサインをとらえ、人工知能を活用して疾病の兆候を自動的に検知することで、疾病を早期発見・早期治療し損耗を回避する技術の開発が求められている。そこで本研究では、共同研究機関により試作された音声センサが、実際に呼吸器病罹患豚の呼吸音等の異常を検出できるかどうか検証し、呼吸器病の早期発見への応用可能性を検討する。

成果の内容・特徴

  • 子豚の頸部背側および耳根部にピエゾセンサを、口角付近に小型マイクを装着することにより、音声データ(体内伝導音、呼吸音等)の収録を行うことができる(図1)。
  • 豚呼吸器病の実験モデル系としてPRRSウイルスを5週齢の子豚に接種すると、臨床的に明らかな呼吸器症状は7日前後から観察され、音声センサデータのスペクトログラムでも呼吸音の強勢が確認される(図2)。病理組織学的検査では、間質性肺炎が認められる。
  • 耳根部のピエゾセンサから得られた音声データを、音響学的手法であるゼロクロス法やメル周波数ケプストラム係数で解析すると、接種3日後から常態からの有意な差として検出できる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 音声センサから取得されたデータの解析により、呼吸器病の早期発見システムへの応用が期待できる。
  • 他の病原体による呼吸器病でも検証が必要である。

具体的データ

図1 豚への音声センサ装着状態,図2 呼吸音のスペクトログラム,図3 ゼロクロス法による解析

その他

  • 予算区分:その他外部資金(28補正「AIプロ」)
  • 研究期間:2017~2019年度
  • 研究担当者:
    三上修、高木道浩、服部奈千子、石光俊介(広島市立大)、飯島聡志(広島市立大)、中山仁史(広島市立大)、成亦兵(広島市立大)、成澤健太(広島市立大)、石田藍子、石田三佳、井上寛暁
  • 発表論文等:石光ら「生体情報測定装置、生体情報測定方法及びプログラム」特開2019-146965