ルーメンセンサを用いた牛のルーメン運動の評価とルーメンアトニーの早期検出

要約

経口投与型のルーメンセンサを用いて牛のルーメン運動を非侵襲的に連続測定することができる。また、ルーメンセンサによるルーメン運動のモニタリングにより、鼓脹症の前段階であるルーメンアトニーの発症をリアルタイムで検出することができる。

  • キーワード:ルーメンセンサ、ルーメン運動、ルーメンアトニー、早期検出、牛
  • 担当:動物衛生研究部門・病態研究領域・生化学ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-7895
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

乳牛や肥育牛で頻発する鼓脹症やルーメンアトニーなどのルーメン運動障害を主徴とする消化器病は生産性を著しく阻害するため大きな問題となっているが、臨床現場において牛のルーメン運動を非侵襲的に連続測定する技術がないため早期検出することは困難である。そこで、本研究では牛の胃内に継続的に留置されルーメン機能を連続して無線送信できる経口投与型ルーメンセンサを用いて、ルーメン運動の評価とルーメンアトニーの早期検出技術の開発を行う。

成果の内容・特徴

  • ルーメンセンサから得られるy軸(長軸方向)加速度波形は、牛への外科手術によって装着したForce transducerによる方法で得られたルーメン運動の波形とほぼ同調して出現し、ルーメン運動の収縮力と収縮頻度において有意に高い相関を示す(図1)。このため、ルーメンセンサを用いると牛のルーメン運動を非侵襲的に評価することができる。
  • 牛に鎮静剤である塩酸キシラジンを投与するとルーメン運動の強い抑制が生じ、投与10分以降に発症したルーメンアトニーをルーメンセンサによって検出することができる(図2、3)。
  • 塩酸キシラジン投与後のルーメンアトニーが40分以上持続すると、ルーメン内ガスの排出障害が起こり牛の左膁部が膨張し鼓脹症を発症する(図2)。

成果の活用面・留意点

  • ルーメンセンサを牛に経口投与することで、非侵襲的なルーメン運動の測定やルーメン運動障害の検出に活用できる。
  • 経口投与したルーメンセンサは排泄されず、牛の第二胃内に継続的に留置される。

具体的データ

図1 ルーメンセンサとルーメン運動(Force transducer法)との相関関係,図2 塩酸キシラジン投与後の牛のルーメン運動の変化,図3 塩酸キシラジン投与後の牛のルーメン運動の収縮力の変化

その他

  • 予算区分:その他外部資金(28補正「AIプロ」)
  • 研究期間:2017~2019年度
  • 研究担当者:新井鐘蔵、岡田浩尚(産総研)、澤田浩、高橋雄治、木村久美子、伊藤寿浩(東大)
  • 発表論文等:Arai S. et al. (2019) J. Vet. Med. Sci. doi:10.1292/jvms.19-0487.