本州北部においてアカバネウイルスを媒介するヌカカの種類を示唆
要約
2010年に本州北部で牛の異常産の原因となるアカバネウイルスが蔓延した際に、Culicoides属ヌカカの採集調査を行い、シガヌカカとホシヌカカが牛舎内で優占種となっていることを明らかにしたことから、両種がアカバネウイルスの伝播に関与していることを示唆できる。
- キーワード:牛、異常産、媒介節足動物、ヌカカ、サーベイランス
- 担当:動物衛生研究部門・越境性感染症研究領域・暖地疾病防除研究ユニット
- 代表連絡先:電話 029-838-7895
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
アカバネウイルスは、牛などの反芻獣の異常産(流産、早産、死産、先天異常子の分娩)の原因となり、夏から秋にかけて、主に西日本で蔓延がみられる。一方、本州北部でもアカバネウイルスによる異常産の流行が時折みられるが、主要な媒介種であるウシヌカカの分布は確認されていない。本州北部の牛舎に飛来するヌカカの種類相を2009年と2010年に調査し、2010年には調査地域でアカバネウイルスが蔓延後、異常産の発生が認められたことから、伝播に関与した種を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 本州北部の37箇所(2009年、28箇所;2010年、22箇所)の牛舎で、ライトトラップによりのべ106回(2009年、60回;2010年、46回)採集を行い、40,149個体のCulicoides属ヌカカの種を同定している。2010年8~10月に本州北部の5県でアカバネウイルスの対する抗体の陽転がおとり牛(前年度未越夏牛)で確認されていることから、ウイルス伝播時のヌカカの種類相を明らかにできる(図)。
- 2009年、2010年とも採集個体の中には、アカバネウイルスの主要な媒介種であるウシヌカカが含まれていない。
- 感染実験によって、アカバネウイルスに感受性を持つことが確認されているホシヌカカとシガヌカカが、多くの採集地点において確認されている。また、アカバネウイルスに対して抗体陽転が認められた市町村やその隣接地点で採集されたヌカカでの両種の割合は高くなっている(表)。
成果の活用面・留意点
- ホシヌカカやシガヌカカは、全国的に分布が確認されているため、アカバネウイルスが侵入した際には、国内すべての地域で伝播リスクがあると考えられる。また、これらの事実に基づき、牛飼養農家に対して、異常産の予防や対策についての啓発を行うことができる。
- 本州北部におけるCulicoides属ヌカカの種類相が明らかになり、他のアルボウイルスの伝播リスクについても推定が可能になる。
- 今後、本州北部へのアルボウイルスの侵入や蔓延の要因を、気象データなどを用いて明らかにする必要がある。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2009~2011年度
- 研究担当者:梁瀬 徹、早山陽子、白藤浩明、筒井俊之、寺田 裕
- 発表論文等:Yanase T. et al. (2019) J. Vet. Med. Sci. 81:1496-1503