BSEプリオンの感染性は600°C以上の灰化処理で完全に消失する

要約

牛海綿状脳症(BSE)はプリオンの感染により発症する。プリオンが蓄積しやすい中枢組織などの特定危険部位と非可食部位を原料とする副産物の不適切な再利用がBSE感染のリスクを高める。本研究課題で、600°C以上の灰化処理がBSEの感染を完全に消失できることを明示する。

  • キーワード:牛海綿状脳症、プリオン、灰化処理
  • 担当:動物衛生研究部門・ウイルス・疫学研究領域・感染生態ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-7895
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

牛海綿状脳症(BSE)プリオンは高い熱抵抗性を持ち、かつウシの副産物である肉骨粉を介して蔓延する。現在、ウシ由来肉骨粉は1000°C以上で5分間以上灰化処理をした後の焼却灰に限って肥料として利用できるが、BSEの感染性が完全に消失するかは定かではない。
そこで、BSE感染ウシせき髄を用いて様々な温度で灰化処理した材料を用いて、遺伝子改変マウスへの感染実験と異常プリオン蛋白質超高感度検出法であるProtein Misfolding Cyclic Amplification(PMCA)法とを組み合わせでBSE感染性の減衰を検証することで、牛由来肉骨粉のBSE感染リスク評価と有効利用に資する科学的知見を得ることを目的とする。

成果の内容・特徴

  • BSE感染ウシのせき髄をすりつぶした材料(500mg)を図1の温度で20分間灰化処理すると、それぞれ異なる様相を示し、200°Cで蛋白質分解酵素に抵抗性のプリオン蛋白質は検出できない。(図1)
  • BSEの感染性を迅速に検出するために、遺伝子改変マウスの腹腔内に50mg当量のウシ材料を投与したのち、150日目の脾臓に異常プリオン蛋白質が蓄積しているか否かをPMCA法で調べると、600°C以上の温度で異常プリオン蛋白質は検出されない。(図2)
  • 繰り返し試験を2回実施しても、600°C以上で異常プリオン蛋白質は検出されず、BSEの感染性が完全に消失することが示される。

成果の活用面・留意点

  • ウシ由来肉骨粉などを安全に有効利用するための科学的知見を提供する。
  • 脳内投与法と比べてマウスに対して低侵襲性である腹腔内投与法は不活化処理した材料について汎用的にBSEの感染性を迅速かつ高感度に調べることを可能とする。

具体的データ

図1 灰化処理によるBSE感染ウシせき髄材料の様相変化,図2 ウエスタンブロット法によるマウス脾臓のPMCA後の異常プリオン蛋白質の検出

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2019年度
  • 研究担当者:
    松浦裕一、石川有紀子、村山裕一、横山隆、Robert Somerville(ロスリン研)、北本哲之(東北大)、毛利資郎(東北大)
  • 発表論文等:Matsuura Y. et al. (2019) J. Gen. Virol. 101(1):136-142.
    doi://10.1099/jgv.0.001335