Trueperella pyogenes新規同定用PCR法
要約
多くの動物種で多様な化膿性日和見感染症を引き起こすTrueperella pyogenesについて、新規同定用PCR法を開発し、既報のPCR法では正確に同定できなかった株も含め異なる動物種由来のT. pyogenesを迅速かつ正確に同定することを可能とした。
- キーワード:Trueperella pyogenes、化膿性日和見感染症、同定用PCR
- 担当:動物衛生研究部門・細菌・寄生虫研究領域・病原機能解析ユニット
- 代表連絡先:
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
Trueperella pyogenesは、多くの動物種で多様な化膿性日和見感染症を引き起こす病原体である。本病原体は畜産業においても経済的な損失を引き起こすため、正確かつ迅速に診断し、対策することが重要となる。しかし、我々は最近、T. pyogenesの溶血毒素遺伝子(plo)を標的とした既報の種特異的PCR法(Jost BH. et al.(2002)Vet. Res. Commun. 26:419-425)では同定できない羊由来のT. pyogenes株に遭遇した。
そこで本研究では、既報のPCR法では同定できない羊由来株も含め、多様な動物種由来のT. pyogenes株を正確かつ迅速に同定するための新規PCR法を開発する。
成果の内容・特徴
- 既報のT. pyogenes同定用PCRプライマーでは、PCR条件を変えてもT. pyogenesおよび近縁種のDNAからの非特異的な増幅を完全に抑えることは困難である。また、既報のプライマーがアニーリングするplo遺伝子領域には、菌株によってはプライマー配列との数塩基のミスマッチが存在し、PCRの特異性と感度に影響を及ぼしている可能性が推測される。
- 本成果であるplo遺伝子を標的とした新規T. pyogenes同定用PCRプライマー(表1)は、供試した全ての牛、豚、山羊、羊由来T. pyogenes株から特異的なPCR産物のみを増幅することができ(図1)、他菌種からはPCR産物の増幅が全くみられない(図1)。また、1反応あたりT. pyogenesのDNAが10 pg含まれていれば、本菌を検出することが可能である(図2)。
普及のための参考情報
- 普及対象:国内外の家畜衛生検査施設及び食肉衛生検査施設
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国、海外
- その他:
詳細な検査方法についてはマニュアルを作成し、陽性コントロールと共に普及対象となる国内の検査施設への配布に努める。
具体的データ
その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2019年度
- 研究担当者:髙松大輔、越智健太(愛媛県)、岡本真理子、岡本みさき(千葉県)、大倉正稔
- 発表論文等:Ochi K. et al. (2020) J. Vet. Med. Sci. 82:109-114