ウイルス様粒子を基とした新規ワクチンプラットフォーム
要約
外来タンパク質を立体構造(抗原としての機能)が保たれた状態で発現するウイルス様粒子を生産できる。この粒子の接種により抗体を誘導できるため、病原体由来の抗原を発現させることでさまざまな感染症に対するワクチンが開発できる。
- キーワード:ワクチンプラットフォーム、ウイルス様粒子、免疫誘導、バキュロウイルス
- 担当:動物衛生研究部門・ウイルス・疫学研究領域・疾病防除基盤ユニット
- 代表連絡先:
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
家畜感染症の予防のためにこれまで多くのワクチンが開発・実用化されてきているが、未だにワクチンがない疾病も数多く存在する、そのような疾病に対するワクチン開発には従来の手法とは異なるアプローチが必要である。ウイルス様粒子(VLP)はウイルスと同じ外観を示すため、生体内にVLPが投与されると免疫細胞はVLPを認識して免疫反応を起こす。VLPはウイルスの遺伝情報を持たないため病原性がなく安全なワクチンとして利用できる。そこで、これまでに我々が作製したウシパピローマウイルスのウイルス様粒子(BPV-VLP)の表面に別のタンパク質を発現させ、その免疫誘導効果を示すことによりBPV-VLPのワクチンプラットフォームとしての有用性を明らかにする。
成果の内容・特徴
- ウシパピローマウイルス(BPV)のL1タンパク質で形成されるウイルス様粒子の立体構造モデルから、外来タンパク質の挿入候補部位を選定する(図1)。候補部位にモデルタンパク質として緑色蛍光タンパク質(EGFP)を挿入したL1との融合タンパク質をバキュロウイルス発現系で生産する。
- 生産されるタンパク質は緑色蛍光を示すウイルス様粒子(EGFP-BPV-VLP)を形成する(図2)。
- EGFP-BPV-VLPをマウスに接種するとアジュバントがなくても血清中にEGFPとBPVの両方に対する抗体が誘導される(図3)。
成果の活用面・留意点
- 外来タンパク質を発現するPV-VLPを生産できる。
- 外来タンパク質とBPVに対する抗体の誘導にアジュバントを必要としないため、BPV-VLPは外来抗原を発現させるための有用なワクチンプラットフォームとなり得る。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、その他外部資金(28補正「経営体プロ」)
- 研究期間:2019~2020年度
- 研究担当者:渡邉聡子、藤本瑞、真瀬昌司
- 発表論文等:
- Watanabe S. et al. (2020) Vaccine 38:7774-7779
- 渡邉ら 特願2020-022843、特願2020-186754(優先出願)