イムノクロマト検査キットによる乳汁中黄色ブドウ球菌の迅速検出

要約

本研究に用いたイムノクロマト法による検査キットは、特別な機器を必要とせず簡単な操作で短時間に乳汁中の黄色ブドウ球菌の有無を確認できる。

  • キーワード:金コロイドイムノクロマト、黄色ブドウ球菌、乳房炎、抗原検出、特異抗体
  • 担当:動物衛生研究部門・病態研究領域・寒地酪農衛生ユニット
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

牛乳房炎の原因菌の同定には一般に細菌培養法が用いられるが検査に日数を要し、その精度は従事者の熟練度に依存するため、酪農現場でより簡便で迅速な乳房炎原因菌の同定技術の開発が求められている。本研究では、牛乳房炎の主要な原因菌である黄色ブドウ球菌を検出するための特異的な抗体を用いた迅速かつ簡易に黄色ブドウ球菌の抗原検出を行うことができるイムノクロマト検査キットを使って、乳汁中の黄色ブドウ球菌の検出能力を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 本研究に用いたイムノクロマト検査キット(図1)は乳汁中黄色ブドウ球菌の菌数が多いほど明確に反応する(図2)。
  • 臨床現場から採材した246サンプルの牛の乳汁を用いた評価において、細菌培養法と比較して感度100%、特異度91.9%が得られ、本研究に用いたイムノクロマト検査キットは簡易検査法として十分な性能を有している(表2)。
  • 本研究に用いたイムノクロマト検査キットは低いレベルではあるが、黄色ブドウ球菌と遺伝的に近い関係にあるコアグラーゼ陰性ブドウ球菌株に対して陽性反応を示すことがある。

成果の活用面・留意点

  • 本研究に用いたイムノクロマト検査キットは日数を要する細菌培養法に代わり、牛乳房炎由来の乳汁から迅速かつ簡便に黄色ブドウ球菌の検出を可能とする。これにより獣医師による治療方針の選択や農場管理者による搾乳順位などの見直しに活用できる。
  • 本研究に用いたイムノクロマト検査キットは乳汁中の黄色ブドウ球菌の検出に適用できる可能性が高いが、一部のコアグラーゼ陰性ブドウ球菌との交差性に関しては留意して結果を判断する必要がある。

具体的データ

図1 本研究に用いたイムノクロマト検査キットの原理,図2 黄色ブドウ球菌の菌数に応じたイムノクロマト検査キットの結果(結果 -:陰性、+:陽性),表1 細菌培養法と比較したイムノクロマト法による検査キットの感度および特異度

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(受託試験)
  • 研究期間:2017~2020年度
  • 研究担当者:
    長澤裕哉、菊佳男、菅原和恵、藪崎尚弘(NOSAIみなみ、ちばNOSAI(現))、大野和吉(NOSAIみなみ)、藤井健人(NOSAIみなみ)、鈴木隆秀(NOSAIみなみ)、前花浩志(旭化成(株))、林智人
  • 発表論文等:Nagasawa Y. et al. (2020) Front Vet Sci. 6:504