鶏の大量死に関与する鶏貧血ウイルスの解析
要約
2017年に国内の地鶏群でみられた大量死の要因は、鶏貧血ウイルスと鶏伝染性気管支炎ウイルスの混合感染症である。この発生で分離された鶏貧血ウイルスは過去の国内分離株と比較してやや強い病原性を有する。
- キーワード:鶏、鶏貧血ウイルス
- 担当:動物衛生研究部門・病態研究領域・病理ユニット
- 代表連絡先:
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
鶏貧血ウイルス(CAV)は、鶏に感染して発育不良を起こすことで養鶏の生産性に慢性的な悪影響を及ぼす。免疫不全も起こすため別の病原体の二次感染を誘発する場合もある。全ての日齢の鶏がCAVに対する感受性を持ち、長期の持続感染も起こる。一般的に野外での発症事例は2~3週齢の鶏で認められ、その感染経路の多くはCAV感染種鶏からの介卵伝播である。またCAVは環境抵抗性が非常に強く、一旦汚染されると施設からウイルスを撲滅することは困難である。本研究では、2017年に国内で地鶏の大量死がみられた事例の病性鑑定及びこの事例で分離したCAV株の解析を行い、発症要因やウイルスの病原性などの野外でのCAV対策に有用な知見を得ることを目的とする。
成果の内容・特徴
- 2017年に西日本の農場に導入された地鶏群の97.7%(127/130羽)が斃死した事例は、CAVワクチン未接種の種鶏に由来する雛において発生したCAVと鶏伝染性気管支炎ウイルス(IBV)の混合感染症である。病理組織検査により、体内に両ウイルス抗原を伴う組織病変が観察されることから、本症例はCAVとIBVの混合感染症と診断される(図1)。
- 分離されたCAV HS1/17株は、2014-2016年の中国分離株と遺伝子学的に近縁である。
- HS1/17株を鶏に接種する感染実験において、強い発育不良、貧血、斃死などが観察される(表1、図2)。HS1/17株が7日齢の鶏に斃死や臨床症状を惹起したことから、HS1/17株は、過去の国内分離株と比較してやや強い病原性を有すると判定される。
成果の活用面・留意点
- 鶏に臨床症状を生じる病原性の強いCAVが養鶏場に侵入するリスクに注意を要する。
- 対策として種鶏へのCAVワクチン投与を確実に実施することが必要である。地鶏や銘柄鶏などの小規模養鶏場でのワクチンプログラムを含む飼養衛生管理を再確認することが重要である。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2019~2020年度
- 研究担当者:
山本佑、黒川葵、真瀬昌司、細川久美子(広島県)、今井邦俊(帯広畜産大)、小川晴子(帯広畜産大)、Dong Van Hieu(帯広畜産大)
- 発表論文等:Hosokawa K. et al. (2020)J. Vet. Med. Sci. 82:422-430