異常プリオン蛋白質は、感染性、凝集活性、蛋白質分解酵素耐性を示す。感染動物においてこれらの性状の経時変化を詳しく調べると、異常プリオン蛋白質には性質の異なる複数の蛋白質分子がある。
プリオン病の病原体「プリオン」の本体は異常プリオン蛋白質であり、ヒトを含む動物体内にある正常プリオン蛋白質の立体構造が変化したものである。感染した個体では、異常プリオン蛋白質が蓄積した結果、神経細胞が変性・脱落し発症する。
異常プリオン蛋白質の特徴として、①感染性、②凝集活性、③蛋白質分解酵素耐性を持つことが知られており、これらの性状を基に異常プリオン蛋白質の検出が行われている。最も重要である感染性の検出は時間を要することから、一般的に凝集活性と蛋白質分解酵素耐性が検出指標として用いられている。しかし、感染性と他の指標の関連性について完全に明らかになっておらず、そのためプリオンの感染性に対する不活化処理の効果を評価する際、検出指標により結果が異なることが問題となる。
そこで本研究では、これらの活性の関係性を明らかにすることを目的とし、プリオン感染動物で異常プリオン蛋白質が増幅する際の各活性の経時的な変化を詳細に調べる。マウス馴化牛海綿状脳症(BSE)プリオンをマウスに脳内接種し、感染マウス脳を経時的に採取する。脳に蓄積した異常プリオン蛋白質の①感染性、②凝集活性、③蛋白質分解酵素耐性を各々、①マウスバイオアッセイ法、②real-time quaking-induced conversion (RT-QuIC)法、③ELISA法を用いて測定する。