サルモネラ感染に対するO4抗体の感染防御はO5抗原の影響を受ける
要約
Salmonella TyphimuriumはO5抗原保有株とO5抗原欠損株があるが、O4抗体による感染防御はO5抗原の有無により影響を受ける。
- キーワード: サルモネラ症、感染防御、O5抗原、O4抗体、液性免疫
- 担当:動物衛生研究部門・細菌・寄生虫研究領域・細胞内寄生菌ユニット
- 代表連絡先:
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
サルモネラ属菌は、2,600以上の血清型に分類され、血清型は、菌体表面にあるO抗原とH抗原の抗原性の相違により分類される。Salmonella enterica serovar Typhimurium(S. Typhimurium)は、O5抗原保有株(O5+株)とO抗原のアセチル化に関与するoafAの変異によりO5抗原を欠いたO5抗原欠損株(O5-株)がある。O4抗原は我々が明らかにしたサルモネラ感染防御に関与する菌体成分の一つであり、既知の不活化ワクチンの感染防御抗原の一つと考えられている。本研究では作製したO4抗原を認識するモノクローナル抗体を用いてS. Typhimurium O5+株および S. Typhimurium O5-株に対する感染防御能をマウスin vivoレベルで検証したものである。
成果の内容・特徴
- S. Typhimurium に対するO4抗体による感染防御は、O5抗原の有無により影響を受け、O5+株では感染防御効果が認められない(図1)。
- O4抗体でS. Typhimurium O5+株とO5-株を処理すると、O5-株のみがマクロファージへのサルモネラの取り込みを促進させる(図2)。
- O4抗体でS. Typhimurium O5+株とO5-株を処理し、マクロファージに貪食させると、O5-株を感染させたマクロファージのTNF-αの産生が増加する(図3)。
成果の活用面・留意点
- O抗原を利用した新規ワクチン開発を進める際は、O5抗原の有無も考慮してO4抗原の利用を進めることを推奨する。
具体的データ

その他
- 予算区分:競争的資金(科研費)
- 研究期間:2015~2020年度
- 研究担当者:
江口正浩、Marta Elsheimer-Matulova(JSPS)、Swarmistha Devi Aribam、中山ももこ、小川洋介、下地善弘
- 発表論文等:Elsheimer-Matulova M. et al. (2020) Vaccine. 38:5408-5412