RNAヘリカーゼAtRH7はrRNA成熟に関与し、低温下での生長に必須である

要約

シロイヌナズナのAtRH7はRNAの高次構造を解きほぐすタンパク質であり、低温で誘導される。その欠損変異体は低温下でリボソーム(r)RNAの成熟が異常となり、生育や発生が著しく阻害される。常温においても、葉や花器官において形態異常が観察される。

  • キーワード:低温ストレス、RNA代謝、リボソーム、シロイヌナズナ
  • 担当:生物機能研究部門・遺伝子利用基盤研究領域・組換え作物技術開発ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-7007
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

植物の環境適応においてRNA高次構造の制御は重要である。これまでに、シロイヌナズナにおいて、RNAシャペロンと呼ばれるRNAの2次構造を解消させるタンパク質(AtCSP3)が耐凍性を正に調節することを明らかにした。AtCSP3と相互作用するタンパク質をスクリーニングした結果RNAヘリカーゼをコードするAtRH7が単離された。そこで本研究では、AtRH7の細胞内における機能を明らかにするため、AtRH7の変異体を単離し、その表現型を解析する。

成果の内容・特徴

  • 試験管内プルダウン解析および二分子蛍光相補性(BiFC)解析の結果から、AtRH7(At5g62190)が、リボソーム生合成を司る核小体において、AtCSP3と相互作用すると結論される(図1)。
  • AtRH7はRNAヘリカーゼをコードし、相同遺伝子欠損の大腸菌csdA変異体が示す低温感受性を相補する(図省略)。
  • シロイヌナズナのAtRH7遺伝子を破壊した変異体(rh7)は、低温下での発芽、生育、本葉の発生が著しく阻害される(図2)。
  • rh7は子葉葉脈パターンの異常、第一ロゼット葉の尖形化等他のリボソーム関連変異体と類似する表現型を示す(図省略)。
  • rh7においては35S-rRNA転写物の成熟中間体の蓄積が検出され、低温下ではその傾向が一層顕著となる(図3)。このことから、AtRH7は、特に低温下でrRNAの構造変換に重要な役割を演じていることが判る。
  • 以上のことから、シロイヌナズナが低温環境下で生育するためには、AtRH7によるリボソームRNAの2次構造異常の解消が必須である。

成果の活用面・留意点

  • リボソーム生成機構は進化的に極めて保存性が高いため、他の植物も同様な機構を持つ可能性が高い。
  • AtRH7の機能強化による低温耐性の向上効果については今後検討する必要がある。

具体的データ

図1 AtRH7はAtCSP3と相互作用する?図2 AtRH7変異体は低温下で生育異常を示す?図3 ノーザン法によるpre-rRNAプロセシング過程の解析

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2015年度
  • 研究担当者:今井亮三、Yuelin Liu(北大院農)、多羽田大介(北大院農)
  • 発表論文等:Liu et al.(2016)PLOS ONE 11(4), e0154040