BSR1高発現イネは4種の重要病害に抵抗性を示す

要約

イネ由来の病害抵抗性遺伝子BSR1を高発現するイネは、複数の白葉枯病菌レース、複数のいもち病菌レース、籾枯細菌病菌、ごま葉枯病菌の感染に対して抵抗性を示す。本研究成果は複合病害抵抗性イネを開発するための重要な知見となる。

  • キーワード:イネ、いもち病抵抗性、ごま葉枯病抵抗性、籾枯細菌病抵抗性、白葉枯病抵抗性
  • 担当:植物・微生物機能利用研究領域・植物機能制御ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-8361
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

糸状菌によるいもち病、ごま葉枯病、細菌による籾枯細菌病、白葉枯病はイネ(Oryza sativa L.)の重要病害である。我々はこれまでに、イネ由来の病害抵抗性遺伝子BSR1(BROAD-SPECTRUM RESISTANCE 1? 受容体様細胞内リン酸化酵素をコード)を高発現するイネは、原品種の「日本晴」に比べ、レースIの白葉枯病菌(Xanthomonas oryzae pv. oryzae)、レース003.0のいもち病菌(Pyricularia oryzae)に抵抗性になることを報告している。本研究ではこのイネが、異なるレースの白葉枯病菌やいもち病菌の感染にも抵抗性を示すか、さらに、ごま葉枯病菌(Cochliobolus miyabeanus)や籾枯細菌病菌(Burkholderia glumae)の感染にも抵抗性を示すのかどうかの検証を行い、BSR1高発現イネが広範な病害抵抗性を持つことを明らかにする。

成果の内容・特徴

  • BSR1高発現イネは、新たに2種類のレース(レースII及びIII)の白葉枯病菌の感染に抵抗性を示す(図1)。これまでの成果と合わせると、このイネは計3種類のレースの白葉枯病菌に抵抗性を示す。ここで示された抵抗性は白葉枯病ほ場抵抗性強である「あそみのり」をしのぐ。
  • BSR1高発現イネは、新たに1種類のレース(レース007.0)のいもち病菌の感染に抵抗性を示す(図2)。これまでの成果と合わせると、計2種類のレースのいもち病菌に抵抗性を示す。
  • BSR1高発現イネは、籾枯細菌病菌の感染による苗立枯症に抵抗性を示す(表1 )。
  • BSR1高発現イネは、ごま葉枯病菌の感染にも抵抗性を示す(図3)。

成果の活用面・留意点

  • BSR1高発現イネは4種の重要病害、いもち病、ごま葉枯病、籾枯細菌病、白葉枯病、に対して抵抗性を示し、複合病害抵抗性イネを開発するための重要な遺伝子資源となる。
  • ただしBSR1高発現イネには発芽率の低下も認められるので、実用化には発現レベルの最適化が必要である。

具体的データ

図1 BSR1高発現イネの白葉枯病抵抗性?図2 BSR1高発現イネのいもち病(レース007.0)に対する抵抗性?図3 BSR1高発現イネのごま葉枯病抵抗性?表1 BSR1高発現イネの籾枯細菌病抵抗性

その他

  • 予算区分:委託プロ(次世代ゲノム)
  • 研究期間:2013~2017年度
  • 研究担当者:前田哲、林長生、森昌樹
  • 発表論文等:Maeda S. et al.(2016)Breeding Sci. 66(3):396-406