L-ヒスチジンの根部処理によるトマト青枯病抑制効果
要約
アミノ酸の一種であるL-ヒスチジンをトマトの根部に処理することにより、難防除病害である青枯病の発病が抑えられる。L-ヒスチジンは青枯病菌に対する抗菌活性はなく抵抗性誘導物質(プラントアクティベーター)として働いている。
- キーワード:青枯病、トマト、L-ヒスチジン、アミノ酸、プラントアクティベーター
- 担当:生物機能部門・植物・微生物機能利用研究領域・植物微生物機能ユニット
- 代表連絡先:電話 029-838-7440
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
難防除土壌病害である青枯病は、トマトやナス、ピーマン、ジャガイモ等の多くの作物に甚大な被害を及ぼす重要病害のひとつである。しかしながら、現在、土壌くん蒸剤の他に青枯病に対する有効な農薬は登録されていない。このような状況下で、本病に有効な薬剤の開発に資するべく、新たな抵抗性誘導物質(プラントアクティベーター)となる天然物質を探索する。
成果の内容・特徴
- アミノ酸の一種であるL-ヒスチジンは青枯病の発病抑制効果を示す酵母抽出液の活性成分として同定される(図1)。
- L-ヒスチジンを予め根部に処理したトマトは、青枯病の発病が抑制される(図2)。同様の発病抑制効果は、タバコおよびシロイヌナズナでも認められる(データ略)。
- アルギニンやリシン等のアミノ酸も同様に青枯病発病抑制効果が認められる(図3)。
- 青枯病の発病抑制効果は、L体のヒスチジンで認められD体では活性がない(データ略)。
- L-ヒスチジンは、青枯病菌に対する直接的な抗菌活性は認められず(図4)、プラントアクティベーターとして働いている。
成果の活用面・留意点
- L-ヒスチジンの抵抗性誘導のシグナル伝達系としてエチレンが関与している。
- L-ヒスチジンの発病抑制は葉面散布では認められない。
- L-ヒスチジン等のアミノ酸は病害抵抗性誘導剤のリード化合物に利用できる。
具体的データ
その他
- 予算区分:交付金、その他外部資金(SIP、イノベーション創出)
- 研究期間:2008~2016年度
- 研究担当者:瀬尾茂美、中保一浩、繁森英幸(筑波大)、高橋英樹(東北大院農)、光原一朗
- 発表論文等:
1) Seo S.et al. (2016) Plant Cell Physiol. 57 (9):1932-1942
2) 中保ら「青枯病抵抗性誘導剤及び青枯病防除方法」特許6007360 (2016年9月23日)