日本産クワコの遺伝的多様性の日本列島全域にわたる評価

要約

日本のクワコ自然集団は714bpのミトコンドリアCOI断片上の3SNPサイト上の変異をもとに4分割される。

  • キーワード:クワコ、COI、SNP、遺伝的多様性
  • 担当:生物機能利用研究部門・新産業開拓研究領域新・特性シルク開発ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-6285
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

遺伝子組み換えカイコの生物多様性影響評価の対象であるクワコについて日本列島に全域にわたる遺伝的多様性を評価することを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 図1で示した101地点(集団)から採集された7708個体から得られたミトコンドリアCOI断片(714bp)の塩基配列を決定する。
  • 714塩基中135サイトが多型的であり、このうち325番目の塩基サイトが最も多様性に富み(SNP325)、これに156番目(SNP156)と666番目(SNP666)が続く。3サイト毎に集団間の多型のパターン(アリル頻度)は異なる(図2)。
  • これらのサイトの対立遺伝子の組み合わせにより日本列島のクワコ集団は4領域に分割される(図3)。
  • 対象となった7708COI塩基配列にはカイコの由来の配列は検出されない。

成果の活用面・留意点

  • 本研究で得られたクワコの遺伝的多様性に関する分子生態学的データは遺伝子組換えカイコの生物多様性影響評価を行う際に行政当局により使用される資料となる。
  • クワコ地域集団間の遺伝的差異に関するデータは日本列島の生息する昆虫種の系統地理のモデルケースとして利活用できる。

具体的データ

図1 クワコの採集地点(集団)101か所の分布;図2 3塩基サイト(SNP325,SNP156,SNP666)での101集団間のアレル頻度の違い;図3 4領域に分割される日本列島のクワコ集団

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(次世代ゲノム)
  • 研究期間:2016~2017年度
  • 研究担当者:行弘研司、河本夏雄、冨田秀一郎、阪口洋樹(京都工芸繊維大)、伊藤雅信(京都工芸繊維大)
  • 発表論文等:Yukuhiro K. et al. (2017) J. Insect Biotechnol. Sericol. 86:77-84