γアミノ酪酸(GABA)による植物保護細菌の制御
要約
アミノ酸の一種であるγアミノ酪酸(GABA)は、植物保護細菌Pseudomonas protegensのキュウリ根圏への定着能を促進する。
- キーワード:植物保護細菌、代謝制御、バイオフィルム、根圏定着、環境保全型農業
- 担当:生物機能利用研究部門・植物・微生物機能利用研究領域・植物微生物機能ユニット
- 代表連絡先:029-838-7912
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
非病原性シュードモナス属細菌Pseudomonas protegensは、植物の根圏に定着し、自身が生産する抗菌性二次代謝産物により植物病原微生物の生育を抑制することから植物保護細菌とよばれている。抗菌性二次代謝産物の生産は、小分子RNAを介したシグナル伝達系により調節される。本研究では、植物保護細菌の機能を高めるため、そのシグナル伝達系で制御される代謝産物の中からバイオフィルム形成能と根圏定着能に深く関わる物質を探索する。
成果の内容・特徴
- 植物保護細菌P. protegensのシグナル伝達系の制御下にある物質として、二次代謝産物やアミノ酸の一種であるγアミノ酪酸(GABA)が同定されている(データ略)。
- GABAアミノ基転移酵素遺伝子(gabT)の欠損変異株(ΔgabT)はGABAを異化できないことから、野生株と比較してGABAの菌体内濃度が上昇する(表1)。
- GABAの菌体内濃度が上昇するΔgabTは、野生株と比較してバイオフィルム形成能が低下する(図1)。
- バイオフィルム形成能が低下すると浮遊状態が促され(データ略)、キュウリ根圏への定着能が上昇する(表2)。
- GABAは植物保護細菌のバイオフィルム形成能を低下させることで、その細菌の根圏への定着を促進する機能がある。
成果の活用面・留意点
- GABAは植物保護細菌の根圏定着能を高める物質として活用できる。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、競争的資金(科研費、農食事業)
- 研究期間:2014~2017年度
- 研究担当者:竹内香純
- 発表論文等:Takeuchi K. (2018) Mol. Plant-Microbe Interact. 31:274-282