タカサゴシロアリが木質繊維(キシラン)を分解するメカニズム

要約

沖縄県八重山諸島に分布するタカサゴシロアリの消化管内に生息し、餌の木片に大量に付着する細菌の1種(トレポネーマ属スピロヘータ)がキシラナーゼと呼ばれる消化酵素を生産し、木材に含まれるキシランの分解に主要な役割を果たしている。

  • キーワード:タカサゴシロアリ、キシラン分解、キシラナーゼ、遺伝子系統解析
  • 担当:生物機能利用研究部門・新産業開発研究領域・生体物質機能利用技術開発ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-6102
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

国内の温帯域に広く分布するヤマトシロアリやイエシロアリは、主に腸内に共生する原生生物が木材に含まれるセルロースやキシランの分解を行っていることが知られている。しかし熱帯域を中心に分布するシロアリの多くは、このような原生生物を腸内に保有していない。
そこで本研究は、沖縄県八重山諸島に分布する食材性高等シロアリであるタカサゴシロアリを対象として、キシランを分解するメカニズムを明らかにする。

成果の内容・特徴

  • タカサゴシロアリ腸内のキシラン分解活性は、後腸の不溶性画分(木片と細菌の塊)に局在し、セルロース分解活性よりも高いことが示される(図1)。
  • 後腸から抽出された木片に付着しているバクテリアを単離し、次世代DNAシーケンサーを用いて発現遺伝子の網羅的解析を行ったところ、特定の種類のキシラナーゼ遺伝子群が高発現していることが確認される。
  • 高発現しているキシラナーゼと相同な配列を有するキシラナーゼ遺伝子を大腸菌に挿入し、当該キシラナーゼを異種生産したところ、高いキシラン分解活性が示される。
  • 木片付着細菌群集を抗原としてモノクローナル抗体を作製したところ、上述のキシラナーゼに反応する抗体が得られ、その抗体はらせん状の細菌を認識する(図2)。
  • 次世代DNAシーケンサーを用いて木片付着細菌群集のゲノムDNA配列を網羅的に解析し、高発現しているキシラナーゼ遺伝子は、トレポネーマ属スピロヘータのゲノムに存在することが示される。

成果の活用面・留意点

  • 本研究では、タカサゴシロアリのキシラン分解機能を明らかにすると共に、共生スピロヘータ由来のキシラナーゼを大腸菌で生産することにも成功している。近年、キシランを分解して得るキシロースの需要が高まっており、本知見は効率的なキシロース生産に資すると思われる。
  • 本研究では、タカサゴシロアリがセルロースと並んでキシロースを資源化できることを明らかにしたものである。シロアリ類の防除を栄養面から考える上での重要な知見であり、今後、シロアリ防除のためのキリラナーゼ・ブロッカーなどの開発等につながる可能性がある。

具体的データ

図1 左:タカサゴシロアリ後腸に局在する不溶性画分(矢印)、右:可溶性分画(水色)と不溶性分画(オレンジ)の酵素活性,図2 タカサゴシロアリ腸内でキシラナーゼを生産する共生細菌(緑)の分布の様子青い大きな塊は木片の自家蛍光

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2016~2018年度
  • 研究担当者:徳田岳(琉球大)、Aram Mikaelyan(ノースカロライナ州立大)、福井知穂(琉球大)、松浦優(琉球大)、渡辺裕文、藤島政博(山口大院)、Andreas Brune(マックスプランク研)
  • 発表論文等:Tokuda G. et al. (2018) PNAS doi:10.1073/pnas.1810550115