ヒメハナカメムシ3種の配偶システムの違い
要約
生物農薬として有効な3種ヒメハナカメムシのメスの配偶システムは種によって異なり、タイリクヒメハナカメムシとコヒメハナカメムシは受精すると交尾を拒否する一回交尾であるのに対し、ナミヒメハナカメムシは受精後も複数回の交尾を行う。
- キーワード:配偶システム、多回交尾、一回交尾、種間比較
- 担当:生物機能利用研究部門・昆虫制御研究領域・昆虫相互作用ユニット
- 代表連絡先:電話029-838-6071
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
ナミヒメハナカメムシ、タイリクヒメハナカメムシ、コヒメハナカメムシの3種は、アザミウマなどの難防除微小害虫を捕食することから、害虫防除に有望な土着天敵として効率的な利用法が検討されている昆虫である。これら日本土着種では多回交尾をするとの報告があるものの、海外の近縁種では一回交尾であることが確認されている。ヒメハナカメムシ類は生物農薬として大量増殖が行われており、配偶システムの解明は効率的な増殖技術の開発に寄与すると考えられる。そこで本研究は、ヒメハナカメムシ3種の配偶システムを明らかにする。
成果の内容・特徴
- 3種のオスはすべて多回交尾を行い、3日間連続してメスを受精させることができる。また、多回交尾による受精能力の低下は見られない。
- ヒメハナカメムシ3種のメスは産卵管を立ててオスの交尾行動を物理的に阻害し、交尾を拒否することができる。
- メスが一回だけ交尾を行うコヒメハナカメムシとタイリクヒメハナカメムシは、交尾器の形態に類似点が多い。
- コヒメハナカメムシとタイリクヒメハナカメムシのメスは2回目以降の交尾を行うが、多回交尾を行うのは受精が成立していない場合に限られ、受精が成功するとその後の交尾は拒否する。このため、これら2種ヒメハナカメムシの多回交尾は「見かけ上」であり、一回交尾の種である(図1)。
- ナミヒメハナカメムシのメスは、受精が成功した場合でも再交尾を受け入れることから、「真の」多回交尾を行う(図1)。
成果の活用面・留意点
- ヒメハナカメムシの大量増殖において、雌雄比の調節や交尾済みのメスのオスからの隔離などにより、増殖効率を高めることができる。
具体的データ
その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2011~2018年度
- 研究担当者:新川徹、谷合幹代子、前田太郎
- 発表論文等:Arakawa T. et al. (2018) Entomol. Exp. Appl. doi:10.1111/eea.12740