コナガのジアミド剤抵抗性原因変異の同定

要約

アブラナ科野菜の重要害虫であるコナガのジアミド剤抵抗性個体は作用点であるリアノジン受容体に抵抗性の原因となる点変異によるアミノ酸置換をもつ。この点変異は遺伝子診断による簡易かつ迅速なジアミド剤抵抗性モニタリング実現に活用できる。

• キーワード:コナガ、薬剤抵抗性、フルベンジアミド剤、シアントラニリプロール剤、一塩基置換
• 担当:生物機能利用研究部門・遺伝子利用基盤研究領域・先進昆虫ゲノム改変ユニット
• 代表連絡先:電話 029-838-6071
• 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年、アブラナ科野菜の重要害虫であるコナガPlutella xylostellaでは、基幹剤であるジアミド剤(フルベンジアミド、クロラントラニリプロール)の抵抗性を発達させた個体群が全国的に拡大し、これらの薬剤による防除が困難となっている。一方、後発のジアミド剤であるシアントラニリプロールは防除効果が比較的高く、抵抗性個体群の拡大はみられていないが、今後の全国的な抵抗性発達の可能性が危惧されており、遺伝子診断による各ジアミド剤の抵抗性モニタリング技術の開発が求められている。そこで本研究では、フルベンジアミド剤抵抗性コナガ系統およびシアントラニリプロール剤抵抗性コナガ系統を用いて、次世代シーケンサーによるQTL解析等により、コナガの各ジアミド剤抵抗性の要因を特定する。

成果の内容・特徴

• QTL解析により、コナガのフルベンジアミド剤およびシアントラニリプロール剤の抵抗性原因遺伝子が存在するQTLはいずれも第24連鎖群に検出される(図1)。
• これらのQTLにはリアノジン受容体遺伝子が存在し、フルベンジアミド剤抵抗性系統(KU13)では一塩基置換(点変異)により4946番目のアミノ酸がグリシンからグルタミン酸に置換され(G4946E変異)、シアントラニリプロール剤抵抗性系統(KA17)では点変異により4790番目のアミノ酸がイソロイシンからリシンに置換される(I4790K変異)(図2)。これらのアミノ酸置換が各抵抗性の主要因と考えられる。特に、コナガのシアントラニリプロール剤抵抗性の要因となるアミノ酸置換の同定は本研究が世界で初めてである。
• フルベンジアミド剤抵抗性系統(KU13)はフルベンジアミド剤とクロラントラニリプロール剤に対して強い抵抗性を示し、シアントラニリプロール剤に対しては弱い抵抗性を示す(表1)。シアントラニリプロール剤抵抗性系統(KA17)はフルベンジアミド剤、クロラントラニリプロール剤、シアントラニリプロール剤に対して、いずれも強い抵抗性を示す(表1)。

成果の活用面・留意点

• 同定した各点変異は、コナガの各ジアミド剤抵抗性個体を判別する簡便かつ迅速な遺伝子診断技術の開発に活用できる。

具体的データ

その他

• 予算区分:交付金、委託プロ(次世代ゲノム)
• 研究期間:2014～2019年度
• 研究担当者:
  上樂明也、桑崎誠剛、宮本和久、内山誠(京都大)、黒川竜紀(京都大)、森恵美子(京都大)、森誠之(京都大)、園田昌司(宇都宮大)
• 発表論文等:Jouraku A. et al. (2019) Insect Biochem. Mol. Biol. 118:103308