アミノ酸はトマトかいよう病の発病を抑制する

要約

L-ヒスチジン等のアミノ酸はトマトの根部に処理することにより、抗菌活性を示さずに難防除病害であるトマトかいよう病の発病を抑制する。アミノ酸を用いた抵抗性誘導剤の開発が期待できる。

  • キーワード:トマトかいよう病、プラントアクティベーター、アミノ酸、病害防除
  • 担当:生物機能利用研究部門・植物・微生物機能利用研究領域・植物微生物機能ユニット
  • 代表連絡先:電話 050-3533-4624
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

L-ヒスチジン等アミノ酸は、トマト青枯病に対して、抗菌活性を示すことなくトマトの病害抵抗性を誘導することにより防除効果を発揮する。アミノ酸の他病害に対する防除効果を明らかにするため、トマトの重要病害のひとつであるトマトかいよう病に対する防除効果の有無を検証する。

成果の内容・特徴

  • L-ヒスチジンを予め根部に処理したトマトは、トマトかいよう病の発病が抑制される(図1)。
  • L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン、L-グルタミン、グリシン、L-ロイシン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-スレオニン、L-トリプトファン、L-チロシンはL-ヒスチジンと同等のトマトかいよう病発病抑制効果を示し、L-バリン、L-アスパラギン酸、L-イソロイシンはL-ヒスチジンよりも低い抑制効果が認められる。
  • L-ヒスチジンはトマトかいよう病菌に対する直接的な抗菌活性は認められない(図2)。L-ヒスチジンはトマト青枯病に対して抵抗性誘導物質(プラントアクティベーター)として働いていることから、トマトかいよう病に対しても同様に働く可能性がある。
  • アミノ酸の発病抑制効果を発揮させるために根部処理は48時間以上必要である(データ略)。

成果の活用面・留意点

  • 農薬メーカー等はL-ヒスチジン等アミノ酸を原料としてトマトかいよう病に対する抵抗性誘導剤の開発に活用することができる。
  • 国内で農薬登録され生産・販売されている抵抗性誘導剤は対象病害がイネいもち病等に限定されている。L-ヒスチジン等アミノ酸を用いることにより新しい抵抗性誘導剤が開発できると期待される。

具体的データ

図1 各種アミノ酸のトマトかいよう病抑制効果,図2 L-ヒスチジン添加によるトマトかいよう病菌の増殖への影響

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2018~2019年度
  • 研究担当者:瀬尾茂美、中保一浩
  • 発表論文等:
    中保、瀬尾「トマトかいよう病抵抗性誘導剤及びトマトかいよう病防除方法」特開2019-147762(2019年9月5日)