オオムギ縞萎縮病抵抗性で極多収のもち性六条大麦新品種「きはだもち」
要約
もち性の六条皮麦品種「きはだもち」は、オオムギ縞萎縮病I、II、III型に抵抗性で穂発芽しにくく、「キラリモチ」と比べて出穂期で4日、成熟期で2日程度遅い中生種である。「キラリモチ」と比べて6割程度多収で、精麦の黄色みはやや強く、β-グルカン含量はやや多い。
- キーワード:六条皮麦、もち性、多収、オオムギ縞萎縮病抵抗性、高β-グルカン含量
- 担当:次世代作物開発研究センター・麦研究領域・小麦・大麦育種ユニット
- 代表連絡先:電話 029-838-8862
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
関東・東海地方で最も多く作付されているもち性の二条裸麦品種「キラリモチ」は、精麦品質が優れ、炊飯後も変色しにくい特性を持つが、収量が少なくて遅れ穂が発生しやすい上、穂発芽しやすい欠点がある。そこで、もち性大麦の生産拡大と生産者の収益向上に貢献するため、関東・東海地方に適する多収で穂発芽しにくいもち性の品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 「きはだもち」はもち性(アミロースフリータイプ)の並性六条皮麦である。多収でオオムギ縞萎縮病抵抗性を持ち、β-グルカン含量の多いもち性品種の育成を目標として、外国育成のもち性のβ-グルカン高含量品種「Azhul」を1回親、多収でオオムギ縞萎縮病抵抗性を持つうるち性の「東山皮101号(のちの「シルキースノウ」)」を反復親とする戻し交配を1回行い、以降、系統育種法で育成した品種である。
- 播性程度は"IV"で、「キラリモチ」より出穂期で4日、成熟期で2日程度遅い中生種である(表1)。
- 稈長は「キラリモチ」と比べて8cm程度長いが、耐倒伏性は"強"で同程度に強い(表1、2)。
- 「キラリモチ」と比べて6割程度収量が多く、多収品種の「シュンライ」と比べても2割程度多い極多収である。整粒歩合は「キラリモチ」より高く、「シュンライ」と同程度である(表1)。
- オオムギ縞萎縮病I、II、III型に抵抗性で、うどんこ病には罹病性である。赤かび病には弱いが、穂発芽耐性は"難"で優れる(表2)。
- 搗精時間は「キラリモチ」と比べて長く、精麦の黄色みがやや強いため精麦白度はやや低い(表3)。
- 穀粒が高蛋白質化しても、「キラリモチ」と同様にもち性で胚乳が白濁しているため、硝子質粒の発生が少ない(表3)。
- 精麦のβ-グルカン含量は「キラリモチ」と比べて1~2ポイント多い(表3)。
- 千葉県内の農事組合法人が生産・加工した精麦製品が販売されている(図1)。
成果の活用面・留意点
- 栽培適地は、関東から東海の平坦地である。
- 利用許諾件数は4件(2019年12月現在)で、千葉県および栃木県内の計4カ所の農事組合法人等で作付けが開始されており、2019年産での普及面積は4.7haである。
- 既存の六条大麦と同様に赤かび病に弱いので、防除基準に従い適期防除を徹底する。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2005~2019年度
- 研究担当者:塔野岡卓司、栁澤貴司、青木恵美子、平将人、吉岡藤治
- 発表論文等:栁澤ら「きはだもち」品種登録出願公表第33420号(2018年12月25日)