様々な植物ウイルスの増殖を抑制できるダイズRsv4遺伝子
要約
ダイズ「Peking」由来のダイズモザイクウイルス抵抗性遺伝子Rsv4はウイルスの二本鎖RNAを分解する新規の核酸分解酵素をコードする。本遺伝子はダイズモザイクウイルスだけでなく、様々な近縁ウイルスの防除にも利用可能である。
- キーワード:ダイズモザイクウイルス、ポティウイルス、DNAマーカー、Peking、dsRNase
- 担当:次世代作物開発研究センター・畑作物研究領域・畑作物形質評価ユニット
- 代表連絡先:電話 029-838-7930
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
ダイズモザイクウイルス(SMV)はダイズに感染すると収量や品質の低下を引き起こす。防除手段として、古くからSMV抵抗性のダイズ品種が育成されてきたが、従来利用されてきたSMV抵抗性遺伝子を打破するSMV変異株が出現しており、変異株への対策が急がれる。本研究では、変異株を含む広範囲のSMVに有効なダイズのSMV抵抗性遺伝子Rsv4をポジショナルクローニング法により特定し、育種選抜に使えるDNAマーカーを開発するとともに、どのようにSMVの増殖を抑制するかを解明する。
成果の内容・特徴
- 原始的な品種「Peking」が有するSMV抵抗性遺伝子Rsv4は新規の核酸分解酵素dsRNaseをコードし、ウイルスの二本鎖RNAを分解することでウイルスの増殖を抑える機能を有する。
- 遺伝子の変異を利用したPCRベースのDNAマーカーは、「Peking」由来のRsv4遺伝子の有無だけでなく、異なる抵抗性アリルを持つ抵抗性品種や系統のRsv4遺伝子も判別できる(図1)。
- マーカー選抜と戻し交配により実用品種の遺伝背景にRsv4を導入し、「Peking」の不良形質を除去した育種素材を利用できる(図2)。
- Rsv4遺伝子はSMVだけでなく、近縁のウメ輪紋ウイルス、ジャガイモYウイルス、ジャガイモAウイルス、カブモザイクウイルス、インゲンマメモザイクウイルス、ラッカセイ斑紋ウイルスなどのポティウイルス属ウイルスの増殖を抑えられる(図3)。
成果の活用面・留意点
- DNAマーカーはRsv4のマーカー選抜育種に利用可能であり、免疫的な抵抗性遺伝子であるRsv1やRsv3との集積により、打破されにくいSMV抵抗性ダイズ品種の育成が期待できる。
- Rsv4遺伝子を用いてダイズ以外の作物の近縁ウイルスの増殖を抑制するには遺伝子組換え技術の利用が必要になる。
- Rsv4遺伝子による増殖抑制効果はポティウイルス属ウイルス特異的であるため、他のRNAウイルスの増殖を抑制するには、ウイルス認識部位等の改変が必要になる。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、委託プロ(次世代ゲノム)
- 研究期間:2012~2019年度
- 研究担当者:
加賀秋人、石橋和大、猿田正恭、清水武彦、叔淼、穴井豊昭(佐賀大)、小松邦彦、山田直弘(長野県農試)、片寄裕一、石川雅之、石本政男
- 発表論文等: