少量・多検体の分析が可能なRVA缶を用いた炊飯米物性評価法

要約

ラピッドビスコアナライザーの測定容器(RVA缶)を用いて炊飯から物性測定までを行う炊飯米物性評価法である。物性測定容器を用いて炊飯することで5 gと少量の精白米で一日に最大50点程度の炊飯米物性が評価可能である。得られた物性値は食味官能評価の結果とも有意な相関を示す。

  • キーワード:炊飯米物性、RVA缶、少量炊飯、食味官能評価、テクスチャー
  • 担当:次世代作物開発研究センター・稲研究領域・米品質ユニット
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

食の多様化が進む中、外食・中食・内食向けに用途に応じた炊飯米物性を示す水稲品種の育成が求められている。食味官能評価は炊飯米の物性および用途を判断するための重要な指標とされているが、実際に人が食べた時の評価を基準米との相対的な数値として示すため、基準米が異なる地域や異なる年度の食味試験データを比較できず、数百グラムの精白米が必要で限られたサンプルにしか実施できないといった問題がある。食品物性を客観的な数値で測定可能なテクスチュロメーターを用いて炊飯米物性を一~数粒ずつ評価する方法があり、必要とする精白米の量も少なくて済むが、ブレンド米など物性が均一でない試料の測定ができず、一日の測定可能検体数が少ないといった課題がある。
そこで、本研究では少量・多検体の試料の分析を可能にするために、炊飯から物性測定までを同一の容器で行う炊飯米物性評価法を開発し、炊飯米物性値の中から、食味官能評価との相関が高く、育種選抜に活用できる指標を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ラピッドスコアナライザー(RVA、Perten社)の測定容器(RVA缶)は、熱伝導が高く形状と重量が均一なため、これを用いて5 gの精白米を炊飯し、炊飯後に容器ごとクリープメーター(山電)で物性を測定する(図1)。物性測定の際には直径20 mmの円筒形樹脂製プランジャーを用い、測定速度5 mm/secで炊飯後の試料高の50%圧縮でのテクスチャー測定を行う。従来のプリンカップやビーカー等を用いた炊飯法では精白米を20 g程度要する。
  • 一度に30点の試料を分析した場合、9時に開始して16時に一連の作業を完了できる。このうち2.5時間は吸水~炊飯後の温度調整で固定される時間であり、一日に最大50点程度までの試料の分析が可能である。従来のテクスチュロメーターの測定では粒単位で20粒以上の測定が必要なため一日に最大10点程度の測定が限度である。
  • テクスチャー測定で得られる物性値のうち、硬さ面積のA1(J/m3)と、付着性A3(J/m3)と硬さA1の面積比率であるA3/A1の値が食味官能評価の"柔らかさ"、"粘り"とそれぞれ有意な相関を示す(図2、表1)。
  • 精白米のアミロース含有率も食味官能評価の"柔らかさ"および"粘り"と有意な相関を示すが、アミロース含有率の幅が狭い場合は、有意な相関を示さない(表1)。
  • アミロース含有率の幅が狭い場合でも、テクスチャー測定で得られるA1およびA3/A1の値は食味官能評価の"柔らかさ"と有意な相関を示す(表1)。

成果の活用面・留意点

  • サンプル量の少ない育成途中の系統や、多検体の分析を必要とする遺伝解析集団、ブレンド米等の炊飯米物性の評価に適用できる。
  • 使用する炊飯器、精米の時期や方法によって物性値は変わるため、物性値を品種間で正確に比較するには炊飯器と精米の時期・方法を一定にする必要がある。
  • 炊飯前後の重量と体積から炊き増えも測定可能であるが、一般的な品種の評判を反映しているかどうかは今後検討する必要がある。

具体的データ

図1. RVA缶を用いた少量炊飯と物性測定の手順,図2. 物性値と食味官能評価項目の

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2018~2019年度
  • 研究担当者:芦田かなえ、保田浩、池ヶ谷智仁、梶亮太
  • 発表論文等:芦田(吉田)ら(2020)育種学研究、22:159-166