橙色を帯びた干しいもが加工できるサツマイモ新品種「ほしあかね」
要約
「ほしあかね」はカロテンを含み、干しいもが淡橙色で透明感のある美しい仕上がりとなる。既存品種「ヒタチレッド」に比べ、いもの裂開が少なく形状が整っているため、加工作業が容易である。干しいもは、シロタ発生が少なく、食味が「べにはるか」並みで優れる。
- キーワード:サツマイモ、加工用、カロテン、干しいも、蒸切干
- 担当:次世代作物開発研究センター・畑作物研究領域・カンショ・資源作物育種ユニット
- 代表連絡先:
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
サツマイモから作られる干しいも(蒸切干)は茨城県を中心に生産され、近年は品質・外観の優れる「べにはるか」、「ほしこがね」等の黄肉色系の品種が多く用いられている。そのため、異なる肉色の品種が望まれていたが、肉色が橙色(オレンジ色)の既存品種「ヒタチレッド」は裂開が多いなど問題があり、新品種の開発が急がれていた。
そこで、カロテンを含有し橙色を帯びた干しいもの生産に適し、いもの裂開が少ない多収性の加工用品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 「ほしあかね」(旧系統名:関東152号)は、カロテンとアントシアニンを含有し病虫害抵抗性が良好な「関東136号」を母、でん粉糊化開始温度がやや低く、干しいも品質が優れる「ほしキラリ」を父とする交配組合せから選抜した品種である。
- 「ほしあかね」は「ヒタチレッド」に比べ、いもの裂開が少なく形状が整っており、目が浅いため加工作業が容易である(図1)。
- 「ほしあかね」は上いも収量が「ヒタチレッド」並み~やや多い(表1)。
- 「ほしあかね」は干しいものシロタ発生が少なく、食味・品質が優れる(図2)。カロテンを含有するため製品は淡橙色で透明感のある美しい仕上がりとなる(図3)。
成果の活用面・留意点
- 全国の加工用サツマイモ生産地帯に適し、茨城県で普及が見込まれる。
- 立枯病抵抗性が"中~やや弱"なので、同病害の発生圃場では、土壌消毒等の防除に努める。
- サツマイモ基腐病の蔓延を防止するため、健全苗の使用を徹底する。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、競争的資金(イノベ創出強化)
- 研究期間:2011~2019年度
- 研究担当者:藏之内利和、片山健二、西中未央、高田明子、藤田敏郎、石黒浩二
- 発表論文等:片山ら「ほしあかね」品種登録出願公表第34613号(2020年6月29日)