ウンシュウミカンにおける着花数予測技術の開発

要約

ウンシュウミカンの11月の春枝茎組織におけるCiFT発現量から翌春の花の数を前もって推しはかることができる。本技術は、採ったあと72時間程度の冷蔵輸送した枝を用いても、翌春の花の数を推しはかることができる。

  • キーワード:ウンシュウミカン、FTCiFT、花、着花予測
  • 担当:果樹茶業研究部門・カンキツ研究領域・カンキツ栽培生理ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-6453
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

カンキツは、果実が多く着いていると翌春の花の数(果実)が少なくなり、それにともなって不作になる。逆に、果実の数が少ない樹では、翌春の花の数、果実の数が多くなり豊作になる。このような特性から、花および果実の数が毎年不安定になる傾向にある。カンキツ栽培では、この特性によって毎年の生産量が大きく変化し、市場への供給量や単価、品質が毎年変化する。現在までに冬季のジベレリン散布や葉を取り除く摘葉処理などの花を少なくする技術が開発されている。これらの技術は、花芽を目視で確認することができない冬季に翌春の花の数を予測できてはじめて利用することが可能となる。現状では、翌春の花の数が分からないため、開発された技術を用いて生産量を安定させることができていない。
近年の研究から、花芽分化の重要な遺伝子のひとつであるFLOWERING LOCUS TのカンキツホモログCiFTの発現が花芽分化と深く関わっていることが明らかになっている。このため、CiFTの発現量を花芽分化の程度を知る目印として使うことで翌春の花の数を前もって推しはかることができると考えられる。そこで本研究では、11月のCiFT発現量が翌春の花の数とどのような関係にあるかを調査し、CiFT発現量によって翌春の花の多少を予測することができるかを明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 11月にウンシュウミカン春枝を採り、葉を取り除いてすみやかに凍らせた茎組織におけるCiFTの発現量は翌春の花の数と深く関わっている(図1AおよびB、図2の非輸送サンプル)。CiFTの発現量が少ないと翌春の花の数は少なくなり、CiFTの発現量が多いと翌春の花の数は多くなる。
  • CiFT発現量と花の数との関係は、年次や地域が違ってもほとんど変わらない(図1AおよびB)。
  • 11月に全国の8つの異なる地域に植えられているウンシュウミカンの枝を採り、冷蔵輸送(4~72時間)してもCiFT発現量が多い樹で翌春に観察される花の数が多くなる。CiFTの発現量と翌春の花の数との関係は、枝を採ってすぐに凍らせたサンプルから得られたデータとほぼ同じになる(図2AおよびB)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、年次や地域が違っても11月のCiFT発現量を調べることによって翌春の花の数を推しはかることができることから、着花調整のための栽培管理を行う際に役立つ。

具体的データ

図1 11月茎組織におけるCiFT発現量と翌春に観察された100節当たりの花数(A)あるいは発芽数当たりの花数(B)との関連;図2 各地域から輸送した枝の茎組織におけるCiFT発現量と100節当たりの花数(A)あるいは発芽数当たりの花数(B)との関連

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2010~2017年度
  • 研究担当者:西川芙美恵、岩崎光徳、深町浩、遠藤朋子
  • 発表論文等:Nishikawa F. et al. (2017) Hort. J. 86(3):305-310