渋皮がむきにくいニホングリにおいても渋皮剥皮率に品種間差異が存在する

要約

「ぽろたん」および「ぽろすけ」以外の、渋皮がむきにくいニホングリ品種・系統間において、渋皮剥皮率に遺伝的な差異が存在する。この差異は連続的な変異を示すことから、複数遺伝子が関与すると考えられる。

  • キーワード:ニホングリ、渋皮剥皮性、HOP法、分散分析
  • 担当:果樹茶業研究部門・品種育成研究領域・ナシ・クリ育種ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-6453
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

従来、ニホングリは渋皮がむきにくい種であるとされてきたが、新品種「ぽろたん」および「ぽろすけ」はニホングリでありながら、鬼皮に傷を入れて加熱すると渋皮がむきやすいという画期的な特長を持っており、この形質は劣性の主働遺伝子(p遺伝子)によって支配されていることが明らかとなっている。これら以外のニホングリは一般に渋皮がむきにくいとされているが、そのむきやすさに品種間差が存在することが示唆されており、量的変異の存在が期待される。そこで、渋皮のむきにくいニホングリにおける、そのむきやすさの品種・系統間差異について評価を行う。

成果の内容・特徴

  • p遺伝子をホモに持たないことを確認した、ニホングリ33品種・系統(17品種、15系統、1野生型)における渋皮のむきやすさについて3年間調査を行う。収穫後5°Cで1ヶ月間冷蔵貯蔵した果実を用い、鬼皮を除去した後に190°Cの食用油中で2分間浸漬して加熱処理する。室温に放冷後フルーツナイフを用いて渋皮の剥皮を行い、果実の表面積全体のうち表面を傷付けることなく剥皮された部分が占める割合を渋皮剥皮率(%)とする(HOP法)。供試した品種・系統の渋皮剥皮率はクリ平塚24号の13.7%からシバグリ37の70.0%まで広く連続的に分布する(図1)。
  • 渋皮剥皮率の差異について、遺伝的要因の効果を分散分析により解析したところ有意であったことから、渋皮剥皮率に遺伝的な差異が存在する(データ省略)。また、その変異が連続的であることから、渋皮がむきにくいニホングリの渋皮剥皮率には品種・系統間差異が存在し、複数の微動遺伝子の関与が示唆される。

成果の活用面・留意点

  • 渋皮のむきにくいニホングリにおいて、そのむきやすさに複数の遺伝子の関与が示唆されたことから、p遺伝子に加えて、渋皮のむきにくいニホングリの中でも比較的高い渋皮剥皮率を示すシバグリ37等が持つ微働遺伝子を集積することで、加熱処理することなく渋皮がむける等の、より渋皮がむきやすい品種を育成できる可能性がある。
  • 本成果における渋皮剥皮率はHOP法により加熱処理を行った結果であり、他の方法で加熱処理を行った場合には渋皮剥皮率が異なる可能性がある。

具体的データ

図1 ニホングリ33品種・系統におけるHOP法による渋皮剥皮率の差異

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2003~2017年度
  • 研究担当者:高田教臣、山田昌彦、西尾聡悟、澤村豊、佐藤明彦、尾上典之、齋藤寿広
  • 発表論文等:Takada N. et al. (2017) Hort. J. 86(4):456-462