香りに特徴がある緑茶用品種「きよか」

要約

「きよか」は普通煎茶の製法で、特徴的な甘い花の香りと滋味に優れた品種である。「さえみどり」並みの早生で、花の香りを有する「そうふう」と比べ、収量が多く、香気と滋味が優れる。

  • キーワード:チャ、きよか、高品質、花香、早生
  • 担当:果樹茶業研究部門・茶業研究領域・茶育種ユニット
  • 代表連絡先:電話0993-76-2126
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

現在、実需者や消費者から、特徴的な香りの緑茶品種が求められている。既存の品種を用い、加工法を工夫して、香気を発揚させた新香味茶の開発は多いが、普通煎茶の製法で香りが強い品種は少ない。そこで、従来の緑茶品種とは異なる、特徴的な香りが強く、滋味に優れた緑茶用品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「きよか」は農研機構果樹茶業研究部門枕崎茶業研究拠点において、花香の強いFYZ-41を種子親、早生で製茶品質に優れる「さえみどり」を花粉親として、1998年に交配したF1実生群の中から選抜した緑茶品種である(図1)。一番茶新芽は鮮緑で、芽揃いに優れる(図2)。
  • 樹姿は"やや開張"、樹勢は"やや強"で、芽重型である。一番茶萌芽期は「やぶきた」に比べ13日早く、摘採日は8日早い早生品種である(表1)。育成地における生葉収量は全茶期を通じて「さえみどり」より少なく(表1)、系適試験における他の研究機関の収量も「さえみどり」より少ない場合が多い。製茶品質は全茶期で「さえみどり」と同等以上であり、香気は特徴的な甘い花香が強く、滋味にうま味が感じられる(表1)。
  • 裂傷型凍害抵抗性は"弱"、赤枯抵抗性は"やや弱"で「やぶきた」に劣っており(表1)、総合的な耐寒性は"弱"と判断される(表1)。
  • 耐病性は炭疽病に対して"やや弱"、輪斑病に対して"中"、赤焼病に対して"弱"、もち病に対して"やや強"である(表1)。クワシロカイガラムシは「やぶきた」並の発生が認められる。
  • 花香が強い「そうふう」と同一圃場で栽培した場合、「きよか」の収量、製茶品質、特に花香の強さと滋味は「そうふう」より優れる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 「きよか」は早生で耐寒性が劣るため、主に九州以南の暖地での栽培に適しており、温暖地では導入に際し、茶園の立地条件等を慎重に判断する必要がある。
  • 本品種は芽重型になりやすいため、芽数を増やす栽培管理が必要である。
  • 短期間(7日程度)の被覆栽培を行った場合も、特徴的な花香は強い。

具体的データ

図1 「きよか」の育成系統;図2 「きよか」の一番茶園相;表1 「きよか」の栽培特性と製茶品質(育成地および特性検定場所);表2 幼木期の「きよか」と「そうふう」の収量・製茶品質の比較(育成地)

その他

  • 予算区分:交付金、競争的資金(イノベ創出強化)
  • 研究期間:2014~2018年度
  • 研究担当者:吉田克志、根角厚司、荻野暁子、山下修矢、佐波哲次
  • 発表論文等:吉田ら品種登録出願公表第33551 号(2019 年3 月14 日)