機能性成分高含有のチャ品種「MK5601」

要約

「MK5601」は機能性成分であるG-ストリクチニンおよびテオガリンを高含有するチャ品種である。これらの成分は新芽の心や第一葉など葉齢が若い部位に多く含まれる。

  • キーワード:チャ品種、MK5601、機能性成分、G−ストリクチニン、テオガリン
  • 担当:果樹茶業研究部門・茶業研究領域・茶育種ユニット
  • 代表連絡先:電話0993-76-2126
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年、国民の健康への関心は益々高まっており、優れた健康機能性を有する農産物の育成が求められている。「茶中間母本農6号」から見出された機能性成分である1,2-di-O-galloyl-4,6-O-(S)-hexahydroxydiphenoyl-β-D-glucopyranose(以下、G-ストリクチニン)およびチャに特徴的に含まれる微量成分であるテオガリンは、いずれも抗アレルギー作用であるBリンパ球に対するIgE産生抑制作用を有する可能性が示されている。そこで、G-ストリクチニンとテオガリンの含有量が高い機能性チャ品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「MK5601」は枕崎(育成地)において、2001年に「茶中間母本農6号」から採種された自然交雑実生群より選抜されたG-ストリクチニンおよびテオガリンの高含有品種である(図1、図2)。本品種は新芽の赤い「茶中間母本農6号」と異なり、新芽の色は緑である(図1)。
  • 樹姿は"やや開張"、樹勢は"強"である。一番茶萌芽期は「やぶきた」と比べて3日早く、摘採日は「やぶきた」より1日早い中生品種である。生葉収量は全茶期を通じて「やぶきた」より多い(表1)。滋味において苦渋味を呈し、製茶品質は「やぶきた」より劣る(表1)。
  • 病害抵抗性は炭疽病に対して"強"、輪斑病に対して"中"で「やぶきた」より優れる(表1)。赤枯抵抗性は"弱"で「やぶきた」より劣り、耐寒性は弱い(表1)。
  • G-ストリクチニンは「やぶきた」には含まれない「MK5601」に特徴的な成分で、3.0~4.0%(乾物重)程度含まれる(図3A)。また、本品種は「やぶきた」には微量しか含まれないテオガリンを2.0%程度含む(図3B)。これら成分は、新芽の心や第一葉など葉齢が若い部位に多く含まれる(図3C、D)。

成果の活用面・留意点

  • 「MK5601」のG-ストリクチニンおよびテオガリンを有効活用するためには、新芽の展葉が進みすぎる前に摘採する必要がある。
  • 本品種は耐寒性が弱いため、主に暖地における栽培に適する。
  • 本品種は機能性成分の増強を目的に育成されたものであり、製茶品質は一般的なチャ品種に比べて劣る。

具体的データ

図1 MK5601の一番茶園相;図2 G-ストリクチニン(A)とテオガリン(B)の化学構造;図3 育成地(2015年)におけるMK5601のG-ストリクチニンおよびテオガリンの茶期別の含有量(A、B)ならびに一番茶の葉位別含有量(C、D);表1 「MK5601」の栽培特性と製茶品質(育成地・枕崎)

その他

  • 中課題名:茶の需要拡大と生産力向上のための新品種、栽培加工技術、評価技術の開発
  • 中課題番号:31006
  • 予算区分:交付金、競争的資金(イノベ創出強化)
  • 研究期間:2014~2018年度
  • 研究担当者:山下修矢、物部真奈美、吉田克志、荻野暁子、根角厚司、佐波哲次、野村幸子
  • 発表論文等:根角ら(2019)「MK5601」品種登録出願公表第33550号(2019年3月14日)