国内主要産地のウンシュウミカン中β-クリプトキサンチン含有量と糖度との関係

要約

国内主要産地におけるウンシュウミカン中のβ-クリプトキサンチン含有量は、極早生品種よりも収穫時期が遅い早生や中生・晩生品種で有意に高く、糖度とβ-クリプトキサンチン含有量には多くの産地・品種で有意な相関関係が認められる。

  • キーワード:ウンシュウミカン、β-クリプトキサンチン、糖度、機能性表示食品、産地間・品種間差
  • 担当:果樹茶業研究部門・カンキツ研究領域・カンキツ流通利用・機能性ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-8011
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

これまでにウンシュウミカン(以下、ミカン)に豊富に含まれるβ-クリプトキサンチンが骨の健康維持に役立つことが明らかにされ、生鮮農産物では初めて機能性表示食品(1日摂取目安量:β-クリプトキサンチン3mg)としての届出が受理され、上市されている。ミカンのβ-クリプトキサンチン含有量は糖度と有意に相関することから、現在ミカンの等級選別の重要な指標として用いられている糖度を非破壊選果機により全数検査することで、間接的にβ-クリプトキサンチン含有量を保証することが可能とされている。しかしながら、ミカン果実中のβ-クリプトキサンチン含有量と糖度との相関関係について検討した例は、静岡県柑橘試験場が試験栽培された「高林」、「宮川早生」、「青島温州」、「寿太郎温州」を対象に解析したデータのみであり(静岡県柑橘試験場研究報告32:1-6,2003)、実際に市場に流通している様々な産地のミカンや品種で調べた知見は殆ど無い。
そこで、静岡県を含む国内の主要なミカン産地4県で生産されている極早生・早生・中生・晩生の各品種でのβ-クリプトキサンチン含有量を分析し、産地間あるいは品種間による差違を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • いずれの産地のミカンにおいてもβ-クリプトキサンチンが含有され、極早生品種よりも収穫時期が遅い早生や中生・晩生品種ほどその含有量は高い傾向にある(表1)。
  • 糖度とβ-クリプトキサンチン含有量は多くの産地・品種でも有意な相関関係が認められ、国内主要4県、極早生~晩生品種の全てのミカンを合わせてもr=0.69(p<0.001)という相関を示す(表1及び図1)。
  • B県の中生・晩生及びD県の晩生品種では、糖度とβ-クリプトキサンチン含有量の相関関係は有意ではないが、何れもβ-クリプトキサンチンを高含有しており(表1)、ばらつきを考慮しても機能性表示食品として必要なβ-クリプトキサンチン量を担保できる。
  • 本研究で調査した全ての産地の早生及び中生・晩生品種では、何れのミカンも可食部100g当たり1mg以上のβ-クリプトキサンチンを含有している(図1)。

成果の活用面・留意点

  • 今回の調査で分析の対象とした品種の内訳は、極早生品種では「上野」や「大浦」、「高林」、「ゆら早生」、「日南1号」等、各産地で様々であった。早生品種では「宮川早生」と「興津早生」が主であった。また中生・晩生品種では「南柑20号」や「青島温州」、「林」等が主であった。商業規模で生産されている代表的な品種はほぼ分析の対象としているが、各農協でのサンプリング段階では具体的なこれら品種の割合までは把握出来ていない。
  • 他の産地のミカン、また貯蔵ミカンや施設栽培されたハウスミカンについても糖度とβ-クリプトキサンチン含有量との関係を検証する必要がある。また今回のデータ収集は同一年度で行ったが、周年変動についても検証する必要がある。
  • 極早生ミカンについては、可食部100g当たり1mg以上のβ-クリプトキサンチンを含有している秀品や優品などの等級の高い(糖度の高い)ミカンに限定すれば、機能性表示食品としての届出は可能である。

具体的データ

図1 国内主要産地におけるミカンの糖度とβ-クリプトキサンチン含有量の散布図

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(27補正「地域戦略プロ」)
  • 研究期間:2016~2017年度
  • 研究担当者:久永絢美、杉浦実
  • 発表論文等:久永ら(2018)園芸学研究、17(4):印刷中