ビワの光合成の最適温度は季節変動し、冬季の光合成は加温により増加する

要約

ビワの光合成の最適温度は夏季に高く(30°C)、冬季に低くなる(5°C)。また、冬季は加温することにより最適温度が上昇し、光合成速度が大幅に高まる。

  • キーワード:ビワ、光合成、光飽和点、最適温度、季節変化
  • 担当:果樹茶業研究部門・生産・流通研究領域・園地環境ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-6453
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ビワの果実は、温度が高い環境で生育すると成熟期間が短くなる。一般に、果実の成熟期間が短くなると光合成を行う期間も短くなるため、果実が小さいまま成熟してしまうことになる。しかしビワの場合、加温施設栽培等で成熟期間が短くなったとしても、成熟を迎えた果実が必ずしも小さくなるとは限らない。このことから、ビワは果実の生育期間中、温度が高い環境ほど光合成が増大している可能性が考えられるが、ビワの光合成と温度との関係についてはほとんど知見がない。そこで本研究では、ビワの個葉における光合成と光および温度との関係とその季節変化、および冬季にビワを加温することによる光合成の増加の程度を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 夏季、秋季、冬季、春季の晴天日に、露地で栽培しているビワ(茂木)のポット樹の個葉について、各光強度における光合成速度を測定すると、光合成速度は季節によらず明瞭な光飽和を示す(図1)。
  • 秋季、冬季、春季、梅雨季、夏季に、露地で栽培しているポット樹を温度制御が可能な恒温槽に入れ、温度と光合成速度の関係を測定すると、光合成速度の最適温度は季節により変化し、秋は15°C、冬季は5°C、春季は20°C、梅雨季は25°C、夏季は30°Cとなる(図2)。
  • 光合成速度は光強度と温度が最適の場合、夏季と秋季に11~12μmol CO2 m-2 s-1となり、冬季は2μmol CO2 m-2 s-1、春季および梅雨季は6~10μmol CO2 m-2 s-1前後となる(図2)。
  • 冬季に、露地で栽培しているポット樹を人工気象室に移して加温させると、光合成速度の最大値は加温時間に応じて増加する(図3)。13°Cで加温した場合、加温開始から2週間程度経過すれば、光合成速度の最大値は継続的に13°Cで加温処理を行った樹と同程度となる。
  • ビワの光合成は冬季の加温により大幅に増大することから、加温栽培により果実の成熟期間が短縮しても、果実は十分肥大すると言える。

成果の活用面・留意点

  • ここでは、温度は葉温、純光合成速度を光合成速度として用いている。
  • 本研究成果は、露地でポット栽培した「茂木」ビワ(2016年時点で5年生樹)の個葉における光合成速度を、携帯型光合成蒸散測定装置(LI-6400XT、LI-COR)を用いて測定した結果である。

具体的データ

図1 光と光合成速度の関係;図2 温度と光合成速度の関係エラーバーは標準偏差;図3 加温による光合成速度の変化エラーバーは標準偏差(n=4)。

その他

  • 予算区分:競争的資金(農食事業)
  • 研究期間:2014~2017年度
  • 研究担当者:紺野祥平、杉浦俊彦
  • 発表論文等:紺野、杉浦(2017)生物と気象、17(4):91-96