従来の白肉品種よりも早く収穫できる極早生白肉モモ新品種「ひめまるこ」

要約

「ひめまるこ」は従来の極早生主要品種の「ちよひめ」などよりも9日程度早く収穫できる白肉モモ新品種である。極早生品種としては糖度が高く食味良好である。

  • キーワード:モモ、新品種、極早生、白肉
  • 担当:果樹茶業研究部門・品種育成研究領域・核果類育種ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-6453
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

現在のモモ市場は、露地栽培された極早生の白肉品種「ちよひめ」などの収穫が始まる6月中旬になると急に出荷量が増える傾向にある。6月上旬までは生産コストのかかる施設栽培が中心で出荷量も少なく、卸売価格は高い。モモの生産、消費を拡大するには流通期間を拡大することが有効であるため、「ちよひめ」よりも収穫期の早い品種が必要である。また、極早生品種は生育期間が短いため、台風被害リスクの軽減及び果実でのせん孔細菌病の発生を抑制することが可能であり、気候温暖化の影響を軽減できる。そこで、「ちよひめ」より早く収穫できる極早生の白肉新品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 2002年に農研機構果樹研究所(現 果樹茶業研究部門)において「紅国見」に「ひめこなつ」を交雑し、得られた実生から選抜した。2010年よりモモ第9回系統適応性検定試験に供試してその特性を検討し、2019年2月の同試験成績検討会において新品種候補とした。2019 年5月17日に品種登録出願し、2019年8月7日に出願公表された。
  • 「ひめまるこ」の樹姿は直立と開張の中間で、樹勢は中程度である。開花盛期は育成地で4月5日頃であり、「ちよひめ」より1日程度遅い。花芽の着生は多く、花粉を有し結実良好である。生理落果の発生は少ない。収穫盛期は育成地で6月7日頃であり、「ちよひめ」より9日程度早い。果実の成熟日数は「ちよひめ」より10日程度短い63日程度である。
  • 「ひめまるこ」の果実は円形で、果実重は170g程度である。果皮の地色は緑白色で着色はやや多く、裂果の発生は少ない。果肉は白色で、溶質である。糖度は15%程度あり、酸度はpHで4.9前後と少ない。極早生品種としては、食味良好である。
  • 「ひめまるこ」は収穫時でも核が軟らかく、核割れの発生も多い。果点の発生により果面の荒れが認められるが、裂果の発生は少なく着色も良好であるので無袋栽培が可能である。

普及のための参考情報

  • 普及対象:モモ生産者。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国のモモ生産地で栽培可能である。特に従来の極早生主力品種「ちよひめ」などを栽培している地域での普及が期待される。
  • その他:苗木の販売は2020年の秋季より開始予定。極早生品種で花粉を有し結実良好であるため、果実肥大を促進するためには摘蕾、摘果等の作業を早めに行う必要がある。せん孔細菌病に罹病性であるため、通常の薬剤散布が必要である。

具体的データ

表1 「ひめまるこ」の樹性(農研機構 2016~2018),表2 「ひめまるこ」の果実特性,図1「ひめまるこ」の結実状況 width=

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2002~2018年度
  • 研究担当者:八重垣英明、末貞佑子、山口正己、澤村豊、土師岳、安達栄介、山根崇嘉、鈴木勝征、内田誠
  • 発表論文等:
    • 八重垣ら「ひめまるこ」品種登録出願公表第33921号(2019年8月7日)