海外需要が高い抹茶・粉末茶に適した緑茶用新品種「せいめい」

要約

「せいめい」は被覆適性が高く、製茶品質に優れるやや早生の緑茶品種である。「せいめい」は「さえみどり」と「やぶきた」に比べ、連続被覆栽培で収量と製茶品質が優れ、アミノ酸、特にテアニン含量が多く、各種加工法で製造されたてん茶の品質は「やぶきた」に優れる。

  • キーワード:チャ、せいめい、高品質、被覆栽培、抹茶
  • 担当:果樹茶業研究部門・茶業研究領域・茶育種ユニット
  • 代表連絡先:電話 0547-45-4105
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

現在、国内外で需要が増加している抹茶・粉末茶の原料茶は被覆栽培が行われており、被覆適性の高い、抹茶・粉末茶向け新品種の普及が急務である。そこで、被覆栽培下でも、収量が多く、色沢とうま味に優れる抹茶・粉末茶に適した新品種「せいめい」の試験成績を提示し、普及を推進する。

成果の内容・特徴

  • 「せいめい」は樹勢"強"で多収の「ふうしゅん」を種子親、早生で製茶品質に優れる「さえみどり」を花粉親として、1992年に交配したF1実生群の中から選抜した。「せいめい」の樹姿は"やや直立型"、樹勢は"やや強"で、間接被覆栽培した一番茶新芽は"濃鮮緑"で、芽揃いに優れる(図1)。
  • 育成地の枕崎市で、遮光率85%の黒色被覆素材を用い、一番茶で18日、二番茶で10日の直掛け被覆を行って摘採・製茶した場合、「せいめい」は一番茶と二番茶の連続被覆で収量が低下せず、製茶品質と粉末茶の色相角度は「さえみどり」と「やぶきた」より優れる。「せいめい」は2品種に比べうま味に関与するテアニン等のアミノ酸含量が高く、渋みに関与するエピガロカテキンガレート(EGCG)と苦味に関与するカフェインの含量が少ない。これらの特性は「せいめい」の被覆適性および抹茶・粉末茶適性が高いことを示す(表1)。
  • 「せいめい」の被覆栽培では、収量は「やぶきた」同等以上で、てん茶の製茶品質と粉末色が優れ、テアニン含量が高く、EGCG含量が少ない特徴が認められる(表2)。また、「せいめい」現地試験の幼木を間接被覆した茶葉(図1)をてん茶に加工すると、色合いに優れ、アミノ酸含量が多く、EGCG含量が低い(表2)。これを石臼で抹茶に加工すると、鮮やかな濃緑で、滋味はうま味と甘味が強く、渋みと苦味はほとんど感じない。これらの特徴は「せいめい」の抹茶適性の高さを示す。「せいめい」の栽培・加工特性は、『海外需要が拡大する抹茶・粉末茶に適した新品種「せいめい」栽培・加工技術標準作業手順書』(図2)として公表され、農研機構のウェブサイトからダウンロードできる。

普及のための参考情報

  • 普及対象:茶生産者、抹茶加工事業者、茶流通業者。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:関東以南の主要茶産地に500ha。
  • その他:「せいめい」は抹茶・粉末茶以外に、煎茶、かぶせ茶および釜炒り茶適性も高く、緑茶品種として汎用性が高い。「せいめい」は(公社)農林水産・食品産業技術振興協会(JATAFF)の海外品種登録出願経費支援制度により、日本の茶品種として初めて、海外品種登録出願を行う(EU、ベトナム、オーストラリア、韓国、中国に出願中)。これにより、日本独自の抹茶・粉末茶品種として日本茶海外輸出の拡大に貢献できる。

具体的データ

図1 間接被覆栽培(23日間)した「せいめい」の一番茶園相,表1 直がけ被覆栽培した「せいめい」の収量・品質・成分特性 (育成地、2015-2017年),表2 「せいめい」と「やぶきた」の被覆栽培時の一番茶収量、加工法の異なるてん茶の製茶品質、色相角度および化学成分含量の比較,図2「せいめい」の栽培・加工技術マニュアル

その他