酵素剥皮果肉を用いたシラップ漬けの果肉の実崩れには煮沸滅菌の温度とシラップの糖濃度が関与する

要約

酵素剥皮果肉のシラップ漬け瓶詰における残存酵素の影響と考えられる果肉の実崩れには煮沸滅菌の温度とシラップの糖濃度が関与しており、瓶の煮沸滅菌温度やシラップの糖濃度を一般的な基準より高くすることで果肉の実崩れを抑制できる。

  • キーワード:酵素剥皮、シラップ漬け瓶詰、煮沸滅菌温度、シラップ糖濃度、実崩れ
  • 担当:果樹茶業研究部門・カンキツ研究領域・カンキツ流通利用・機能性ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-6453
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

酵素剥皮技術はペクチンなどを分解する酵素の溶液を用いて果皮を除去する加工法である。酵素剥皮はカットフルーツなどの短期消費型加工で実用化が先行しているが、シラップ漬け果肉の缶詰や瓶詰などの長期保存型加工では実用化が遅れている。その要因として長期保存下における残存酵素活性の影響が指摘されている。
そこで本研究では、酵素剥皮果肉を用いたシラップ漬け瓶詰における果肉の実崩れ抑制方法を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 酵素剥皮果肉を用いた瓶詰のシラップ漬け製造において(表1)、残存酵素の影響と考えられる果肉の実崩れ(図1)には、煮沸滅菌の温度とシラップの糖濃度が関与している(表2)。
  • 酵素剥皮果肉を用いた瓶詰のシラップ漬けにおける残存酵素の影響と考えられる果肉の実崩れを抑制するには、瓶の煮沸滅菌温度やシラップの糖濃度を一般的な基準より高くする必要が考えられる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 本実験では50%と低糖ジャムの糖濃度に近い高濃度のシラップを用いたため、実用面を考慮した濃度条件下で、滅菌温度との組み合わせにより、実崩れの抑制条件を検討する必要がある。
  • 本実験では果肉が柔らかいハウス栽培の早生ウンシュウを用いているが、シラップ漬けなどに多く利用される果肉の硬い品種では、本研究の条件よりも低い煮沸滅菌の温度かつ低い糖濃度のシラップで実崩れを抑制できる可能性がある。栽培条件や品種によって実崩れのしやすさが異なる可能性があるので、それぞれの加工適性に合わせた煮沸滅菌の温度とシラップの糖濃度を調査する必要がある。

具体的データ

図1 果肉シラップ漬け瓶詰における3か月後の果肉,表1 果肉シラップ漬け瓶詰の製造工程,表2 果肉の実崩れの抑制に関わると予想される要因と分散析結果,表3 果肉の実崩れ抑制に関わると予想される要因の実崩れ率

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2016~2017年度
  • 研究担当者:佐藤景子、喜多正幸、野口真己、杉浦実
  • 発表論文等:
    • 佐藤ら(2019)園芸学研究、18:305-312