リンゴ幼木では晩秋から冬季の窒素施肥が芽に凍害を与える危険性がある
要約
晩秋から冬季の窒素施肥によってリンゴ幼木では芽に障害が発生する危険性が高い。積雪の少ない地域では、晩秋から冬季に基肥を施用する施肥体系になっていることが多いが、凍害発生が懸念される場合は晩秋から冬季の窒素施肥を避けるべきである。
- キーワード:窒素肥料、施肥時期、リンゴ、凍害
- 担当:果樹茶業研究部門・生産・流通研究領域・園地環境ユニット
- 代表連絡先:電話 029-838-6453
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
積雪地域では落葉後に降雪があり施肥ができないのに対し、積雪の少ない地域ではリンゴの基肥を落葉後から春先までに施用することが多く、落葉後の休眠期に肥料を与えてもリンゴの肥料吸収は少ない。同じ落葉果樹であるニホンナシでは、冬季の窒素施肥により発芽不良の発生が助長されることが示されており、この発生要因は凍害と考えられている。さらに、ニホンナシやクリの幼木では晩秋から冬季の窒素施肥によって凍害と考えられる芽の枯死や樹の枯死が発生することが確認されており、暖冬年にはさらに凍害の危険性が高い。そこで、生産現場で凍害の発生が問題となっているリンゴにおいても窒素の施肥時期が発芽等に及ぼす影響を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 窒素肥料(尿素、窒素として1樹当たり5g)を晩秋から冬季に施用するとリンゴ「ふじ」幼木で芽に障害が発生し、その後に芽の枯死、ひどい場合には樹が枯死する(図1、写真1)。
- 主幹部の裂傷部分あるいは枝の切り口から樹液の漏出が見られる樹があり(写真2)、晩秋から冬季に窒素施肥した樹では樹液の漏出率が高い(図2)。
- 枯死芽が発生した樹や樹液が漏出した樹では枝の発酵臭が確認され、これらの症状はリンゴ栽培園地の凍害と同様の症状である。ニホンナシやクリ等の落葉果樹においても晩秋から冬季の窒素施肥が凍害の危険性を高めることが示唆されており、リンゴにおいても凍害発生が懸念される場合は晩秋から冬季の窒素施肥を避けるべきである。
成果の活用面・留意点
- 本成果はポット栽培による結果であり、一般的なリンゴの栽培圃場において冬季の窒素施肥による発芽への影響は本成果と同程度になるとは限らない。
- リンゴ生産地における幼木期(1~5年生)の施肥方法の参考となる。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、委託プロ(温暖化適応・異常気象対応)
- 研究期間:2014~2016年度
- 研究担当者:井上博道、草塲新之助
- 発表論文等:井上・草塲(2019)土肥誌、90:391-394