「あんぽ柿」原料果の適期収穫は放射性Cs濃度の上昇を未然に防ぐ
要約
カキ果実の放射性Cs濃度は幼果期に高く、9月中旬にかけて低下し、その後やや上昇する傾向がある。収穫後期にかけて放射性Cs濃度が高まるものも確認されるため、原料果は適期(11月上旬~11月中旬)収穫が望ましい。
- キーワード:放射性Cs、あんぽ柿、生育ステージ
- 担当:果樹茶業研究部門・生産・流通研究領域・園地環境ユニット
- 代表連絡先:電話 024-593-1310
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
果実加工品「あんぽ柿」の主産地である福島県県北地方では、福島第一原子力発電所事故により放出された放射性物質の影響を受けたことから、出荷前に全製品の放射性Cs濃度を測定した上で、スクリーニングレベル(50Bq/kg)を下回る製品のみを流通させている。スクリーニングレベルを超過する製品の割合は時間の経過ともに低下傾向にあるが、現在でもわずかながら存在することから、「あんぽ柿」の原料となる果実の放射性Cs濃度低減が求められる。本研究では、収穫時期の違いが原料果の放射性Cs濃度に及ぼす影響を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 2015年10月から2016年3月までの「あんぽ柿」の検査情報(JA全農福島、2015)によると、出荷された製品のうち放射性Cs(134Cs+137Cs)濃度が高い製品の割合が12月以降、徐々に増加している傾向がみられる(図1)。現地の聞き取りから、出荷時期が遅い「あんぽ柿」の原料果は収穫時期が遅い傾向がある。
- 収穫適期前のカキ果実の放射性Cs(137Cs)濃度は、調査した全ての樹体で幼果期より低くなる。その後収穫適期にかけて、放射性Cs濃度がやや上昇する傾向がある。収穫適期を過ぎると果実の放射性Cs濃度が有意に上昇する樹体も確認される(表1)。
- 137Csによる汚染が懸念されるほ場では、収穫が遅れた場合、「あんぽ柿」原料果の放射性Cs濃度が上昇する可能性があるため、適期に収穫することが望ましい。
成果の活用面・留意点
- 福島県県北地方において「あんぽ柿」の出荷前全量検査におけるスクリーニングレベル超過リスクをさらに低減できる。
具体的データ
その他
- 予算区分:交付金、委託プロ(営農再開)
- 研究期間:2016~2017年度
- 研究担当者:堀井幸江、関澤春仁(福島県農総セ)、八戸真弓、草塲新之助、濱松潮香
- 発表論文等:堀井ら(2019)園芸学研究、18:391-397