飼養管理効率化に役立つ放牧馴致・マダニ対策技術マニュアル
要約
公共牧場やその利用畜産農家等が省力的に取り組める、運搬時の労力および放牧初期ストレスを緩和する馴致技術ならびに適正なマダニ対策について、わかりやすく解説したマニュアルである。
- キーワード:放牧牛、馴致、マダニ対策、公共牧場
- 担当:畜産研究部門・草地利用研究領域・放牧家畜ユニット
- 代表連絡先:電話0287-37-7807
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
畜産農家が公共牧場等に放牧経験のない牛を預託する際直面する問題として、車両への積み込みの苦労や、飼養環境の変化に伴い発生する体重減少、損耗性疾患等の放牧初期ストレスがある。また近年、マダニが原因となる小型ピロプラズマ症の対策に問題を抱える牧場が増えつつあることから、これらに対して畜産農家や牧場が省力・効率的に取り組める対策技術への要望が高まっている。そこで、子牛に対する車両への積み込み訓練および放牧経験のない牛で放牧初期ストレスを緩和するための新たな馴致技術ならびにマダニ対策技術の高度化について、実証試験等で得た成果をもとに従来より簡便でかつ確実な、利用者にわかりやすい技術マニュアルを提示する。
成果の内容・特徴
- 本技術マニュアル(図1)は、省力な放牧馴致技術およびマダニ対策技術の高度化に関する技術情報を現地実証試験データに基づいて取りまとめたものである。また、利用者がスムーズに実践に移せるよう、具体的な実施方法やポイントを図や写真を多用して紹介し、さらに飼養管理の効率化に参考となる知見をコラムで取り上げている。
- 車両への積み込み訓練は、離乳(8週齢時)にあわせて5日間連続で行う。1日1回、1人の訓練者がロープを使い運搬用トレーラーまで誘導(約12m)し、スロープを歩かせて荷台に乗せ、報酬として角砂糖を与える。この訓練により、訓練から5週後では約1/9の時間で子牛を積み込めるようになり(非訓練牛232.9秒:訓練牛28.9秒)、またその訓練効果は10ヵ月齢まで持続する(図2)。
- 放牧初期ストレスの緩和は、ビタミンE粉末製剤を、預託放牧を開始する2週間前から入牧まで体重100kgあたり5~10g(日量)補給することで行う。未補給の対照牛ではストレスレベルを反映するコルチゾール濃度が顕著に上昇する(移動直後、放牧開始1日目、14日目)のに対し、補給牛では緩和される(図3)。また補給牛は、暑熱の影響と考えられる15~30日目の体温上昇が抑えられる。
- マダニ対策は、放牧牛全頭に殺ダニ剤を適正頻度(放牧期間を通して概ね2週間ごと)で使用することが望ましく、これにより牧野のマダニ生息数を減少させる(図4)。対策効果を十分に発揮させるためには、牧区の集約等による適正な放牧密度の保持と薬剤投入量の維持、休牧によるマダニ発育サイクルの抑制、大型野生動物の牧場侵入阻止等が重要である。
普及のための参考情報
具体的データ

その他