ルーメン環境の改善に有効な活性型酵母ペレット化飼料

要約

水と3種類の賦形剤を混合して調製することにより酵母の活性を保ったままペレット化する牛用飼料の製造法を開発した。ペレット化により活性型酵母が取扱いやすくなり嗜好性も向上するため、ルーメン環境改善用資材として幅広く活用できる。

  • キーワード:活性型酵母、ペレット、ルーメン環境、潜在性ルーメンアシドーシス
  • 担当:畜産研究部門・家畜育種繁殖研究領域・繁殖性向上ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-8630
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

酵母は様々な効果を有するため、家畜の補助飼料として古くから活用されている。活性型酵母は通常胞子の状態で貯蔵されているが、牛に給与するとルーメン内で出芽し、繊維消化細菌や乳酸利用菌の活性を高めるなど、ルーメン環境を改善する効果があり、生産病の原因となる潜在性ルーメンアシドーシスの予防に有効な資材として期待されている。
活性型酵母の原体は顆粒状であるため(図1左)、ペレットに成形(図1右)したほうが家畜に給与する時の利便性が高まり、嗜好性も向上する。しかし、製造過程での加圧やそれに伴って発生する熱で活性を失い、生菌数が減少するため、これまでペレット化は困難であった。そこで、家畜用の飼料添加物として使用が認められているパン酵母(Saccharomyces cerevisiae,アクティサフSC47)を用いて、生菌数を減少させず利便性の高いペレットを製造する技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • ペレット製造時に水を添加することによりペレットの品温が低下する(表1)。
  • 水に加え、ビール酵母と米油を添加することにより、ペレット中の生菌数の減少を抑えることができる。さらに、コーンスターチを添加することにより、ルーメン環境改善に有効とされる生菌数8.0logCFU/g以上のペレットが製造可能である(表2)。
  • この方法により、賦形剤として一般的な飼料原料であるビール酵母、米油及びコーンスターチを用いて、活性型酵母(Saccharomyces cerevisiae,アクティサフSC47)を5%含む飼料用ペレットを調製することができる(図1右)。
  • 活性型酵母ペレットの出芽能は製造後室温で6ヶ月以上維持される。
  • 乳牛に活性型酵母ペレット化飼料を日量100~200g(酵母として5~10g)給与すると、その量に依存してルーメン菌叢を構成するエンドトキシン産生菌の割合が漸減し、繊維分解菌の割合が増加する(図2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:飼料の製造・販売業者、ならびに畜産農家(酪農家、肉用繁殖牛飼養農家及び肥育農家)
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国
  • その他:本成果の一部は農食研究推進事業「ルーメン発酵の健全化による乳牛の繁殖性向上技術の開発」によって得られたものである。アクティサフSC47の原体は機能性飼料として販売されている。活性型酵母のペレット化飼料は日産合成工業(株)で受注生産されており、アクティサフ以外の活性型酵母のペレット化飼料も製造可能である。

具体的データ

図1 活性型酵母原体(左)とペレット化後(右)の形状;表1 水添加によるペレット品温の変化;図2 活性型酵母の給与量とルーメン菌叢を構成する細菌群の割合(%);表2 ビール酵母、米油、コーンスターチ添加による生菌数の推移


その他

  • 予算区分:交付金、競争的資金(農食事業)
  • 研究期間:2013~2015年度
  • 研究担当者:平子誠、上地さり(日産合成)、新子洋(日産合成)、伊藤稔(日産合成)、上野豊(信州大農)、秋山清(神奈川県畜技セ)、蓮沼俊哉(富山県農総技セ)、山本宏(石川県農総研セ)、横川広明(茨城県畜産セ)、山口倫子(千葉県畜総研セ)、川嶋賢二(千葉県畜総研セ)、櫛引史郎
  • 発表論文等:
  • 1)上地ら「ペレット飼料及びペレット飼料の製造方法」特願2017−9457(2017年1月23日)
    2) Uyeno Y. et al. (2017) Anim. Sci. J. 88:119-124