肥育後期豚にすりゴマを給与すると、背脂肪内層中に抗酸化物質が移行する

要約

肥育後期豚にすりゴマを3%含む飼料を出荷体重まで給与すると、ゴマ由来の抗酸化物質であるγ-トコフェロールとゴマリグナン類が蓄積した特色ある豚肉が生産できる。

  • キーワード:肥育後期豚、すりゴマ、ゴマリグナン類
  • 担当:畜産研究部門・家畜代謝栄養研究領域・豚代謝栄養ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-8684
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

豚肉の酸化を抑えることは、風味の劣化やや退色の予防につながり、消費者に豚肉購入を促す要因になると考えられる。飼料中にビタミンEなどの抗酸化物質を添加することで、豚肉の酸化劣化を予防できることが示されている。これまでゴマ油の絞り粕を豚に給与した報告はあるものの、ゴマその物を用いた事例は報告されていない。本研究は強い抗酸化能を持つゴマリグナン類に着目し、ゴマを肥育豚に給与することで特色ある豚肉の生産を目指したものである。

成果の内容・特徴

  • トウモロコシと大豆粕主体の飼料(対照区)と、トウモロコシをすりゴマ(商品名:星印白すりゴマ、九鬼産業)で3%代替した飼料(ゴマ給与区)を調製し(表1)、これを肥育後期豚から出荷体重になるまで給与しても、飼養成績や枝肉成績に差は見られない(表2)。
  • 背脂肪内層中のビタミンE含有量は、ゴマ給与区においてγ-トコフェロールが有意に高くなる。また、セサミン、セサモリンの移行が見られる。対照区ではゴマリグナン類は検出されない(表3)。
  • 冷蔵保存したロース肉背脂肪内層中のTBARS値は、対照区、ゴマ給与区間での差は見られない(表4)。

成果の活用面・留意点

  • ゴマリグナン類を含む特色ある豚肉を生産するための基盤技術として活用できる。
  • 飼料中のトウモロコシを飼料用米で50%代替し、すりゴマを3%添加した飼料を肥育後期豚に給与した場合でも、同等の結果が得られる。
  • すりゴマを利用した脂質過酸化物抑制法の開発のためには、飼料全体が持つ抗酸化活性に占めるすりゴマの抗酸化物質の寄与率を検討する必要がある。

具体的データ

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(資金提供型共同研究)
  • 研究期間:2015年度
  • 研究担当者:田島清、大森英之、芦原茜、山田絢子(日本ハム中央研究所)、大石泰之(日本ハム中央研究所)、堀江智子(日本ハム中央研究所)、加藤美紗子(日本ハム中央研究所)、小園正樹(日本ハム中央研究所)
  • 発表論文等:山田ら(2017)日本養豚学会誌、54(3):109-120