遺伝子選抜による増体性の改良効果はコマーシャル地鶏でも発揮される

要約

秋田県の「比内地鶏」、岐阜県の「奥美濃古地鶏」、熊本県の「天草大王」、宮崎県の「みやざき地頭鶏」の生産の基になっている種鶏を、コレシストキニンA受容体遺伝子の特定の遺伝子型で選抜すると、コマーシャル地鶏においても、増体性の改良効果が発揮される。

  • キーワード:マーカー選抜育種、比内地鶏、奥美濃古地鶏、天草大王、みやざき地頭鶏
  • 担当:畜産研究部門・家畜育種繁殖研究領域・有用遺伝子ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-8625
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

地鶏は、地域の特産品として定着し、ブロイラーよりも高値で取引されている。一方、地鶏は、飼育期間が長く、発育形質の改良が求められている。農研機構と秋田県畜産試験場は共同で、秋田県在来品種である比内鶏において、発育形質と強く関連する遺伝子(コレシストキニンA受容体遺伝子、CCKAR遺伝子)の一塩基多型(SNP)を報告した。一方、全国では地域の特色を生かし、「地鶏肉の日本農林規格」に基づいて、多種多様な交配様式で地鶏肉生産のためのコマーシャル(CM)地鶏が生産されている。例えば、比内鶏と別品種を種鶏とした一代交雑鶏が「比内地鶏」として流通している。そこで、前記の遺伝子型によりCM地鶏生産の基になっている種鶏を改良し、その交雑種であるCM地鶏の発育性改善効果を検証する。多くの種鶏とCM地鶏との組み合わせで検証することにより、マーカー選抜の可能性拡大につながる。今回は、秋田県、岐阜県、熊本県、宮崎県の公設場所が一元的に管理しているCM地鶏を用いて、遺伝子型による発育性改善効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 4県のCM地鶏の交配様式を示す(図1)。マーカー選抜育種の対象は、各CM地鶏の種鶏である。
  • 4県のCM地鶏生産の基になっている種鶏をマーカー選抜し、遺伝子型を固定した後に作出したCM地鶏(改良鶏)は、従来のCM地鶏(従来鶏)よりも、出荷時体重が有意に重い(図2)。
  • 使用した選抜マーカーは、CCKAR遺伝子の5'非翻訳領域に存在するSNP(アデニン(A)とシトシン(C))である。そのうち、増体性の改良に有利に働くSNPはA型である。

普及のための参考情報

  • 普及対象:地鶏生産を担う都道府県の公設場所、家畜改良センター、地鶏生産者団体等
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:秋田県、岐阜県、宮崎県、熊本県。4県のCM地鶏の出荷羽数は、2017年度実績で合計1,250千羽(表1)。
  • 4県のCM地鶏について、旧来の種鶏から、A型固定の種鶏へと完全に入れ替えた場合、4県合計で、年間約66,000千円の生産者所得の増加が見込まれる(表1)。
  • 当該SNPの簡易検出法は確立されており、技術供与できる。

具体的データ

図1 4県のCM地鶏の交配様式,図2 4県のCM地鶏における遺伝的な改良効果:出荷時平均体重の比較,表1 4県のCM地鶏の出荷羽数と出荷時体重増加に伴う生産者所得増収見込

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(27補正「地域戦略プロ」)
  • 研究期間:2016~2018年度
  • 研究担当者:高橋秀彰、力丸宗弘(秋田畜試)、佐々木専悦(秋田畜試)、石川寿美代(岐阜畜研)、浅野美穂(岐阜畜研)、山下裕昭(熊本農研セ畜研)、桃井唯(熊本農研セ畜研)、角﨑智洋(熊本農研セ畜研)、中山広美(宮崎畜試)、堀之内正次郎(宮崎畜試)
  • 発表論文等:
    • Takahashi H. et.al. (2019) J. Poult. Sci. 56:91-95
    • Horinouchi S. et.al. (2019) J. Poult. Sci. 56:96-100