麻酔導入後の豚の移動及び保定を容易にする手術台

要約

市販のハンドリフター付き運搬台車に自作の保定台を組み合わせることにより作製した可動式の手術台である。麻酔導入後の豚の運搬や保定、術野の確保といった一連の手術作業が安全かつ容易に行うことができるため、手術時間の短縮や豚への侵襲性の軽減に貢献する。

  • キーワード:豚、手術、省力化、安全
  • 担当:畜産研究部門・家畜代謝栄養研究領域・豚代謝栄養ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-8684
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

肥育豚や繁殖豚は栄養、生理、繁殖など様々な分野の研究のために全身麻酔下で手術が行われる。動物用の市販の手術台は基本的に手術室に設置して使用するものであり、麻酔導入した豚房から手術室まで豚を運ぶ作業や、豚を持ち上げて手術台に載せる作業には多くの労力が必要で、危険性も高い。また、豚を手術台に載せた後で術者の身長や術式に合わせて豚の高さや角度を調節するのは容易でない。本研究では、これらの問題を解決する手術台を開発する。

成果の内容・特徴

  • 保定台を自作して、市販のハンドリフター付き運搬台車に組み合わせたものであり(図1)、麻酔導入した豚を載せて手術室まで移動し、油圧レバーを踏むことにより高さを変えてそのまま手術作業に移行できるため、作業効率が高い。
  • 保定台の上部は平面状から120°程度のV字状まで、ハンドルを回して角度を調節できる構造であり、豚の体格や手術時の体位に合わせて豚を安定して保持できる(図2)。
  • 手術台の上部に取り付けたローラーを利用することで、手術台の上に豚を容易に引き上げることができる(図3A)。
  • 台車の下部に取り付けたジャッキにより手術中の豚の頭部側あるいは尾部側を上げることができ、術野の確保が容易となる(図3B)。
  • この手術台を用いて体重15kgから150kgの豚で、腸管へのT字カニューレ装着や腹腔内への温度計装着等の手術を100例以上実施している。

成果の活用面・留意点

  • 設計の詳細は、発表論文等1)及び2)に記載しており、豚の手術を行う試験研究機関での活用が期待される。
  • ハンドリフター付き運搬台車は、トラスコ中山社製で耐荷重250kgのもの(8万円程度)を使用しており、また、保定台はステンレス製の角材やパイプ、メッシュシート等を溶接して作製していて、手術台の総重量は約70kgである。
  • 年間30回以上の頻度で3年程度使用しても特段の破損や不具合は生じていないが、使用前に毎回点検することが望ましい。

具体的データ

図1 作製した手術台,図2 豚の大きさに合わせて角度が調節可能な保定台上部,図3 手術台細部 A:豚を引き上げるためのローラー B:保定した豚の頭部側または尾部側を上げるためのジャッキ

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2006~2015年度
  • 研究担当者:松本光史、長野秀範、阪谷美樹、井上寛暁、山崎信、村上斉、梶雄次
  • 発表論文等:
    • 松本ら(2018)日豚会誌、55(3):1-4
    • 長野「動物用移動式手術台装置」特開2014-14631(2014年1月30日)
    • Matsumoto M. et al. (2010) Proceedings of the 1st Asia Pig Conference 25-29