着床期のウシ子宮内膜における血管内皮細胞増殖因子Bの発現動態と血管数の変化
要約
着床期のウシ子宮内膜では、主要な血管新生因子の一つである血管内皮細胞増殖因子B (VEGFB)の発現が亢進するとともに血管数が増加する。VEGFBによる子宮内膜の血管新生の促進はウシの受胎性と密接に関連していると考えられる。
- キーワード:血管内皮細胞増殖因子、子宮内膜、着床、ウシ
- 担当:畜産研究部門・家畜育種繁殖研究領域・繁殖性向上ユニット
- 代表連絡先:電話 029-838-8630
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
ウシを含む反芻家畜において、妊娠初期の子宮血管系の発達と妊娠成立との関連が示されており、これまでに着床期の子宮動脈の血流量や子宮内膜の血流域の増加が報告されている。妊娠初期のウシ子宮内膜の血管新生には様々な調節因子が関与しているが、主要な血管新生因子として知られる血管内皮細胞増殖因子(VEGF)ファミリーの一員である、VEGFBの発現動態は明らかになっていない。そこで本研究では、VEGFBが着床期のウシ子宮内膜において血管新生に関与し、血管数の増加を促進しているとの仮説を検証する。
成果の内容・特徴
- ウシ子宮内膜(1試験区あたり3-4頭)におけるVEGFB遺伝子発現量は、着床前(妊娠15日目)において、着床時(妊娠18日目)や着床後(妊娠27日目)および非妊娠時(発情周期15日目)よりも亢進している(図1)。
- 妊娠15日目および18日目のウシ子宮内膜において、VEGFBおよびVEGFB受容体(VEGFR1)のタンパク質は、管腔上皮、腺上皮、間質、血管に局在している(図2)。
- ウシ子宮内膜の血管数は、妊娠18日目では非妊娠時(発情周期18日目)よりも多く、妊娠15日目から18日目にかけて劇的に増加する(図3)。
成果の活用面・留意点
- 子宮機能不全に起因する長期不受胎等において、VEGFを利用した子宮内膜の血管新生の促進は受胎性の向上に繋がる可能性がある。
- 本研究成果は黒毛和種から得られた成果である。
- ウシ子宮に発現する血管新生因子はVEGFBだけではない。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、委託プロ(繁殖サイクル)
- 研究期間:2015~2019年度
- 研究担当者:林憲悟、細江実佐、作本亮介
- 発表論文等:
- Hayashi KG. et al. (2019) Theriogenology 133:56-64