暑熱環境下の肥育後期豚に低タンパク質飼料を給与しても飼養成績に悪影響を及ぼさない
要約
肥育後期豚用飼料の粗タンパク質含量を2ポイント低下させ、これにより不足するリジン、トレオニン、メチオニンおよびトリプトファンを補足添加すると、暑熱期の飼養成績は改善しないが、背脂肪厚の増加も認められない。暑熱環境下でもアミノ酸を添加した低タンパク質飼料の給与は可能である。
- キーワード:暑熱環境、アミノ酸、飼料中タンパク質、脂肪蓄積、肥育豚
- 担当:畜産研究部門・家畜代謝栄養研究領域・家禽代謝研究ユニット
- 代表連絡先:電話 029-838-8684
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
夏季の高温環境は肥育豚の発育を低下させる。肥育豚における暑熱ストレスを緩和する栄養・飼料面からの方策の一つとして、飼料中粗タンパク質(CP)含量の低減が考えられる。これは、タンパク質の消化および代謝は熱増加をもたらすことから、余剰なタンパク質の給与を少なくすることにより暑熱環境下における熱増加の減少を期待したものである。しかしながら、単純に飼料中のCP水準を低下させた飼料を給与すると体脂肪の蓄積が増加することが知られている。
そこで本研究では、低CP化により不足するアミノ酸を、要求量を満たすように添加した低タンパク質飼料を調製し、その暑熱環境下の肥育豚への給与が飼養成績および脂肪蓄積に及ぼす影響を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 室温32°C一定に管理した暑熱環境においては、CP13.9%の対照飼料給与区と比較して、リジン、トレオニン、メチオニンおよびトリプトファンを要求量の100%となるように添加しCPを2ポイント低下させた飼料(表1)をLWDの肥育後期豚に給与しても、増体日量、飼料摂取量、飼料効率などの飼養成績に差はみられない(表2)。
- 体脂肪蓄積の指標である背脂肪厚は、対照飼料区と低CP飼料給与区との間に差はみられない(図1)。
成果の活用面・留意点
- 低タンパク質飼料の給与による窒素排泄量の低減が期待できる。
- L-リジン塩酸塩、L-トレオニン、DL-メチオニンおよびL-トリプトファンは飼料添加物に指定されている。
- 常温環境下でも飼料の低タンパク質化が可能であるとの既往の成果とあわせると、低CP飼料の給与は通年で可能である。
具体的データ

その他
- 予算区分:委託プロ(温暖化適応)
- 研究期間:2014年度
- 研究担当者:山崎信、井上寛暁、松本光史、梶雄次
- 発表論文等:Yamazaki M. et al. (2019) JARQ 53:47-50