飼料用米を活用した鶏卵の高付加価値化
要約
採卵鶏の飼料に飼料用米を籾米で30%配合しても産卵成績は低下せず、卵黄中ビタミンE含量を増加させる。また、飼料用米給与型鶏卵は慣行鶏卵との間に「食べてわかる違い」が生じる。これらのことから、飼料用米を活用して鶏卵を高付加価値化できる。
- キーワード:採卵鶏、飼料用米、産卵成績、ビタミンE、官能評価
- 担当:畜産研究部門・畜産物研究領域・食肉品質ユニット/家畜代謝栄養研究領域・家禽代謝栄養ユニット
- 代表連絡先:電話 029-838-8684
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
国産自給飼料として飼料用米の生産と利用が推進されている。飼料用米を単なる自給飼料資源としてだけではなく、生産物の差別化にも活用することで、耕畜連携による高付加価値型家禽生産が実現可能である。鶏は飼料用米を籾米のままで給与可能であり、籾すりや粉砕・破砕などの処理をすることなく低コストで飼料用米が利用できる。
そこで、本研究では、採卵鶏への飼料用米給与による産卵成績および鶏卵の付加価値を評価し、国産飼料用米を活用した鶏卵の高付加価値化技術を開発する。
成果の内容・特徴
- 飼料用米として籾米を20~30%含む飼料を採卵鶏に給与しても、産卵成績に差は認められない。また、飼料用米の品種や保存期間は産卵成績や卵質に影響を及ぼさない(表1)
- 飼料用米として籾米を17%以上含む飼料を2~6週間給与すると、卵黄中ビタミンE含量が増加する(図1)。
- 飼料用米給与型鶏卵を半熟卵黄に調理すると、慣行鶏卵より匂いが弱くあっさりとした風味となる。また、カスタードプディングに調製すると、匂いおよびなめらかさと水分が弱く感じられ、あっさりとした風味かつしっかりとした食感となる(図2)。
成果の活用面・留意点
- 鶏卵生産から加工・販売までを一貫して行う経営において、慣行飼料給与で生産された鶏卵との差別化に向けて飼料用米が活用できる。また、特徴ある製菓原料として飼料用米給与型鶏卵は有望である。
- 籾米を常温で1年以上保存する場合はビタミンE含量が低下する可能性があるため注意が必要である。
- 上記の品質特性を活用して鶏卵の差別化を行う場合、品質等を表示するときは景品表示法における優良誤認等の規定に抵触しないよう、実際の希望の品質が得られているかどうか分析測定を実施してから行う必要がある。
- 本成果は地域戦略プロジェクトの研究成果パンフレット「分野:畜産(体系) 飼料用米を活用した鶏卵の差別化による収益力向上技術」としてwwwにて公開されている。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、委託プロ(収益力向上)、その他外部資金(27補正「地域戦略プロ」)
- 研究期間:2015~2019年度
- 研究担当者:
佐々木啓介、松下浩一(山梨県酪畜セ)、小林那美香(山梨県酪畜セ)、本多芙友子(千葉県畜研セ)、成田卓美、渡邊源哉、本山三知代、中島郁世、村上斉
- 発表論文等: