乳牛飼養において「第一胃内液相の理論回転率」という概念的な指標を提案する。この指標を用いることで、第一胃内発酵産物の濃度情報を量的情報に変換するとともに、乾物摂取量、第一胃内発酵で生じる短鎖脂肪酸量、および乳量の量的関係性を論理的に説明できる。
乳牛の飼養管理では、乾物摂取量、脂肪補正乳量、および代謝体重といった変動要因があり、これらは飼料効率の向上を図る上で欠かせない。日本飼養標準では、乳牛に必要な乾物摂取量を推定するために、これらを関連づけた推定式を提供している。しかし、推定式は乳牛管理の実測値から導き出された関係性であり、また、牛の飼料消化システムが特殊であるため、上記関係性を論理的に説明できない。一方、第一胃内発酵で生じるメタンは、乾物摂取量や第一胃内発酵産物等との量的な関係性評価が進んでいる。
そこで、本研究ではメタンの量的関係性を組み入れた「第一胃内液相の理論回転率」(以下TTOR)という、新しい概念的指標を提案する。これを利用して、乾物摂取量、第一胃内発酵で生じる短鎖脂肪酸量、および乳量について関連付けを試み、実測値で検証する。