乳用雄子牛の離乳移行期における粗飼料給与はルーメンアシドーシス抑制に有効である

要約

乳用雄子牛の離乳移行期における粗飼料給与は、ルーメン内pHの日内変動を発現させ、ルーメンアシドーシスを抑制する。さらに、肝臓由来の炎症指標酵素の血中濃度の増加を抑え、成長ホルモン濃度を増加させる。

  • キーワード:乳用子牛、離乳移行期、粗飼料、ルーメンpH、ルーメンアシドーシス
  • 担当:畜産研究部門・家畜代謝栄養研究領域・代謝微生物ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-8600
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

乳用子牛の離乳移行期における栄養管理は、固形飼料への移行を優先しながら栄養レベルを下げない目的でスターターを多給する。スターターの急激な増給や多給は、粗飼料の採食量を減らし、亜急性ルーメンアシドーシス(SARA、ルーメン内pH6.1以下が3時間/日以上)との関連性が指摘されている。また、酪酸によるルーメンの絨毛発達を目的に、粗飼料給与を制限する酪農家も存在する。
本研究では離乳移行期における粗飼料給与の重要性を明らかにするため、粗飼料を給与した乳用雄子牛のルーメン内pHと発酵、および代謝・内分泌機能を調査する。

成果の内容・特徴

  • 離乳を7週齢に設定し、5~10週齢までの離乳移行期において、スターターとカットチモシーを給与する粗飼料区とスターターのみを給与するスターター区に乳用雄子牛を各8頭配置する。
  • 研究用に開発された無線伝送式無線pHセンサをルーメンに留置し、ルーメン内pHを測定すると、粗飼料区には日内変動が発現するが、スターター区では日内変動は認められず、かつ低いレベルで推移する(図1)。粗飼料区ではSARA発生は認められない。
  • 粗飼料区のルーメン液中酢酸(A)濃度は増加し、スターター区ではプロピオン酸(P)濃度が減少することから、対照区のA/P比は高くなる(表1)。
  • 肝臓からの炎症指標酵素であるアスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)濃度は、週齢の経過と共にスターター区で増加する(図2)。血中成長ホルモン濃度は、スターター区で減少するが、粗飼料区は増加する(図2)。両区の日増体量に差は認められない。

成果の活用面・留意点

  • 離乳移行期における粗飼料給与の重要性を示す知見である。
  • 本試験で使用した無線伝送式pHセンサは、研究用に開発された資材であり、市販品では無い。

具体的データ

図1.離乳時(左)および離乳後3週目(右)におけるルーメン液pHの日内変動,表1.離乳時(0週)および離乳後3週目における乳用子牛のルーメン液性状,図2.離乳移行期における乳用子牛の血漿中AST(左)およびGH(右)濃度の推移

その他

  • 予算区分:競争的資金(科研費)
  • 研究期間:2018~2020年度
  • 研究担当者:
    櫛引史郎、新宮博行、竹村 恵(筑波大)、佐藤 繁(岩手大学)、水口人史(山形東亜DKK)、生田健太郎(淡路農技セ)
  • 発表論文等:
    • Takemura K. et al. (2019) J Anim. Sci.97 (5) : 2220-2229.