排水性を簡便に改良する小型トラクター用穿孔暗渠機カットドレーンmini

要約

40馬力程度の小型トラクターで使える穿孔暗渠機カットドレーンminiは、空洞成形ユニットにより30~50cm の深さに8cm角の通水空洞を成形できる。また、溝掘りユニットに交換すると幅10cm・深さ30cmまでに表面排水用の細い明渠を成形できる。

  • キーワード:排水改良、狭小、通水空洞、溝掘りユニット、表面排水、40馬力
  • 担当:農村工学研究部門・農地基盤工学研究領域・水田整備ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-7642
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

田畑輪換や畑輪作における畑作物の安定生産には、圃場の排水性を簡便に改善する営農技術が必要である。これまで農家が使える無資材・迅速な穿孔暗渠機カットドレーンを実用化しているが(2013年度主要普及成果情報)、小型トラクターで作業する小規模な圃場、ハウスや果樹園などの狭小な場所で活躍できるようにカットドレーンに小型化の市場ニーズが生まれた。そこで、一般の農家が保有している40馬力程度のトラクターに装着できるカットドレーンの小型機を開発・実用化する。

成果の内容・特徴

  • 小型トラクターで使用する穿孔暗渠機カットドレーンminiは、1本の切断刃とそれに接続する空洞成形ユニット或いは溝掘りユニットで構成される(写真1)。施工方法は、図1に示すように、a.土を切断し、空洞成形ユニットにより切土部を押上げ、その下に四角形の隙間を作る。b.その横に別の四角形ブロックを切り出し隙間の中に押寄せ、c. 地表から30~50cmの任意の深さに空洞上面に攪乱のない8cm四方の通水空洞を成形する。グライ土などの粘土では、空洞を確実に施工でき、豪雨などが発生しても数ヶ月の短期間で崩落せず、通水空洞を維持している(写真2)。
  • カットドレーンminiは、畦を超えて施工機を排水路内に下ろして法面に空洞を貫き、簡易な暗渠として利用できる。また、圃場の隅に四角形の貯水穴を掘削し、その穴から穿孔して集水することもできる。さらに、圃場面から挿入し既設暗渠に対する補助暗渠としても利用できる。
  • 空洞成形ユニットを溝掘ユニット「カットサーフ」に交換することで、幅10cm・深さ30cm程度の表面排水用の細い明渠を掘削できる(写真1、図1-d、写真2)。
  • カットドレーンminiは、同程度の深度に施工できる心土破砕より狭い、小型トラクターの車幅の2m程度で等間隔に施工できる(写真3)。施工速度は心土破砕と同程度かそれ以下の1~2km/hである。
  • 適用トラクターは、3点リンク接続できる規格がカテゴリーI以上、主に40馬力程度の4輪駆動である。20~30馬力のトラクターでも施工できるが、軽量で牽引力と3点リンクの力が弱いことから、トラクターのフロントと施工機後方のウエイトホルダーにウエイトを載せて、トラクターの牽引力を高める必要がある。

普及のための参考情報

  • 普及対象:排水不良地域の農家や法人、農業団体や市町村、農機メーカー
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:農家圃場での実証を踏まえて、2016年末から販売を開始し、数年内に100台の導入を予定している。
  • 適用条件:カットドレーンminiは、重粘土や泥炭土での適用性が高い。黒ボク土では適用性が低い。また、土性(農学会法)が壌土(L)では耐用期間が短く、砂土(S)と砂壌土(SL)では使用できない。なお、砂礫に富む圃場や埋木のある圃場では使用できない。
  • その他:株式会社北海コーキが製造し、農機メーカーにより代理店販売されている。

具体的データ

写真1 施工機の外観;写真2 施工後の土壌断面の状況;写真3 カットドレーンminiと心土破砕での施工間隔の違い;図1 施工方法の概要

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(27補正「地域戦略プロ」)
  • 研究期間:2015~2016年度
  • 研究担当者:北川巌、馬場貴士、後藤幸輝(北海コーキ)、塚本康貴(道総研中央農試)
  • 発表論文等:北川ら「穿孔成形作業機および穿孔成形方法」特許第6021072号(2016年10月14日)