マンホール型漏水モニタリング施設を用いた小口径管路の維持管理方法

要約

漏水モニタリング施設を用いることによって、小口径管路の漏水事故の早期発見や原因究明が期待できる管路施設の維持管理方法である。漏水モニタリング施設の機能や設置方法などを現場技術者に分かり易く解説したマニュアルが利用できる。

  • キーワード:漏水位置、漏水原因、長寿命化
  • 担当:農村工学研究部門・水利工学研究領域・施設水理ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-7569
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

近年、管路の突発的事故が増加傾向にある。特に、人間が点検のために入ることのできない口径800mm未満の小口径管路の破損事故は、漏水箇所の位置の特定や原因の究明が困難である。この対策として、小口径の管路施設を維持管理するためのマンホール型漏水モニタリング施設(2016年度研究成果情報http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nire/2016/nire16_s03.html)の設置が有効である。
漏水モニタリング施設の機能と構成、設置方法は、現場技術者が活用しやすいようにマニュアルに整理する。初期の微量な漏水を検知して早期に漏水位置を特定することや、それらの漏水事故の原因を究明して速やかに水理学的な対策方法につなげることが期待できる。

成果の内容・特徴

  • マンホール型漏水モニタリング施設は、センサー(流量、水圧、土圧、ひずみ)、データロガー、電源、漏水探査ロボットの投入・回収口、制水弁から構成される(図1)。漏水が懸念される管路区間を挟むようにして、上流側と下流側にモニタリング施設をそれぞれ1カ所ずつ設置する。上流側と下流側のモニタリング施設の距離は200m程度とし、なるべく直線区間に設置する。
  • 漏水モニタリング施設を管路の維持管理に用いることによって(図2)、初期の区間漏水を検知したのち、その区間における漏水箇所の位置を特定することができる。さらに、漏水事故の原因が水理学的要因か土質力学的要因を判断し、水理学的要因である場合は、水圧変動のパターンを分類して、対策方法を検討することができる。
  • 初期漏水の検知は、上下流のモニタリング施設間の区間漏水を計測することで行う。小流量時(夜間や潅水日以外)には、管内水圧の差から漏水量を算出し、大流量時(潅水日)には、流量の差から漏水量を算出する(図2a)。
  • 漏水位置は、モニタリング施設から自走式や流下式の漏水探査ロボットの投入・回収を行い、管路内のき裂や変状を探査することによって特定できる(図2b)。
  • 漏水原因を究明する方法は、道路交通加重と管内水圧が管路の疲労破壊に与える影響を計測する方法や管内水圧を調査する方法に分類する。後者の方法では、管内水圧の変動をパターン化し、それぞれの変動要因に応じた対策を提案している(図2c、d)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:国営・県営の農業土木技術者、農業土木コンサルタント、土地改良区職員
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:漏水が懸念されている小口径管路。管路の突発的事故の発生数は972件(H26)あり、約7割が小口径管路であると推測される(H26農林水産省調べ)。
  • その他:小口径管路の維持管理方法に活用するマンホール型漏水モニタリング施設の機能、構成および設置方法を整理したマニュアルを農研機構のウェブサイトで公開している。

具体的データ

図1 マンホール型漏水モニタリング施設の構成,図2 漏水モニタリング施設を用いた管路の維持管理方法の流れ

その他