V字状に幅広な破砕溝を構築する全層心土破砕機「カットブレーカー」

要約

トラクターに装着する全層心土破砕機「カットブレーカー」は、30~70cmの任意深までに、下端幅10cm・上端幅最大80cmとなるV字状の破砕溝を、1~3連の施工機により、一般的な心土破砕と同じ速度で構築し、下層土や既設暗渠までの浸透性を改善する。

  • キーワード:V字、全層心土破砕、カットブレーカー、営農、トラクター
  • 担当:農村工学研究部門・農地基盤工学研究領域・水田整備ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-7547
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

畑作物の生産性向上には、圃場の排水改良や土層改良が必要な場合が多い。そのため、生産者からは、迅速で簡単に実施できる心土破砕の効果と適用性・確実性をより高める技術が求められている。そこで、農家が迅速で簡単に実施でき、深層まで確実に全面的に破砕できる心土破砕を実用化する。

成果の内容・特徴

  • 全層心土破砕機「カットブレーカー」は、トラクターに装着し、トラクターの牽引力で土中の30~70cmの任意の深さに、1連から3連のV字状の破砕溝を構築する。施工方法は、図1に示すように、V字状の切断刃を挿入して土塊を持上げて破砕、後方に落下させて埋戻し、破砕溝を構築する。破砕溝では、土壌の貫入抵抗値が大幅に低下しており(図2)、透水性と通気性が改善されたことで、根域拡大と湿害回避が期待される。加えて、破砕溝の横に凸状の非破砕な堅密部が形成されており、機械走行のための地耐力の維持とともに保水性の維持による干ばつ回避の効果が期待される。
  • カットブレーカーは、V字状に切断した土を持上げてそのまま落下させるため、土壌の攪乱が少なく、土壌の物理性を改善できる。また、土中の10cm程度の石は、切断刃が斜めに配置されているため、衝突時に石と切断刃が上下方向に相互にズレて後方に抜けることから、表面まで持ち上がることはない(図1)。
  • カットブレーカーは20~50馬力のminiの1連式、50~60馬力のminiの2~3連式、60~150馬力のブレーカー2~3連式の3機種がある。施工速度は心土破砕と同速度の2~4km/hが標準である。
  • カットブレーカーは、堅密な土壌のため作物の生育が抑制される洪積土の圃場において大豆の生育を改善し、収量を増加させた。また、湿害に弱い大豆のほか、根域拡大が必要な根菜類のジャガイモやテンサイの畑作物に対して効果的である(写真1、表1)。
  • カットブレーカーは、概ね全ての土壌に活用できる。使用上の留意点は以下のとおりである。石礫が5%以上の除礫が必要な圃場、石礫5%未満であるが直径30cmを越える巨礫のある圃場、埋木がある圃場に使用できない。施工の間隔はトラクター幅での全面的な施工を標準とする。主に転換畑、畑、草地で使用する。本機は破砕強度が強いため、水田や施工後3年以内に復田する圃場には施工しないことが望ましい。復田を想定する場合は、1連或いは2連の施工機を用い、施工方向を田植え方向に直行させ、旋回部に施工しないこと。

普及のための参考情報

  • 普及対象:普及対象:排水不良地域の農家や法人、農業団体、農機メーカー、建設業者
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国の排水不良地域における畑作物生産地に年100台の導入を想定。2020年2月時点で5道県10農家において実証済み。株式会社北海コーキが製造し、全国のトラクター販売店が販売。ラインナップの価格帯は95~285万円(送料・税別)。技術の詳細は【その他】記載の資料参照。

具体的データ

図1 全層心土破砕機「カットブレーカー」の概要と施工方法,表1 カットブレーカーの畑作物の収量(坪刈り)に対する効果,図2 カットブレーカー施工前後の貫入抵抗値,写真1 カットブレーカーの大豆に対する効果

その他