土壌水分分布測定に基づく圃場内の平均土壌水分量を示す代表地点の抽出

要約

土壌水分状態を監視して作物に灌水するシステムを導入する際の水分センサーの埋設地点を事前に検討するため、圃場内で複数地点の表土の水分測定を複数回行い、その結果にTime stability概念を適用することにより、圃場内の平均的な土壌水分を示す代表地点を抽出する。

  • キーワード:誘電式土壌水分センサー、Time stability概念、代表地点
  • 担当:農村工学研究部門・農地基盤工学研究領域・畑整備ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-7547
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

昨今、畑地圃場における水管理の省力化や畑作物の高品質化等のため、土壌の水分状態を監視しながら、作物に灌水するシステムの導入が検討されている。このシステムの導入にあたり、どの地点の土壌水分を基準に水管理するのが妥当かを検討する必要がある。そこで、我が国の代表的な畑地土壌である黒ボク土の畑圃場と水田の畑地化・汎用化により高収益作物の導入が想定される水田転換畑の圃場を対象に、携帯式土壌水分センサーを用いて複数地点の表土の水分測定を複数回行い、その結果にTime stability概念を適用し、圃場内の平均的な土壌水分量を示す代表地点を抽出する。これにより、土壌の水分状態を監視するための埋設式土壌水分センサーの設置地点を事前に検討することができる。

成果の内容・特徴

  • 圃場内の平均的な土壌水分量を示す代表地点を抽出する手順を示す(図1)。なお、Time stability概念とは、対象とするエリアで土壌水分が時間的に変動するとき、各時間のごとの平均値との差が小さく、変動挙動が平均値と類似した地点を代表地点とする考え方である。
  • まず、圃場内の地点毎、時間毎の表土(0-20cm)の体積含水率を携帯式土壌水分センサーにより測定する(図2)。
  • 地点毎、時間毎の表土の体積含水率測定値(図2)を用いて、地点毎の平均相対差と標準偏差を算出し、その算出結果から、地点毎の平均平方二乗誤差を算出する(図3)。平均平方二乗誤差が最小となる地点が、圃場内の平均的な土壌水分を示す代表地点として抽出される(図3の場合、地点23)。
  • 圃場平均体積含水率と代表地点における体積含水率の関係から、代表地点として抽出された地点が、圃場平均体積含水率から誤差の少ない地点であることが確認できる(図4)。
  • この手順を適用することにより、土壌の水分状態を監視するための埋設式土壌水分センサーの設置地点を事前に検討することができる。

成果の活用面・留意点

  • 代表地点の信頼性を高めるためには、土壌水分分布測定回数をできる限り多くする(3回以上)ことが重要となる。
  • 本手法を応用することにより、圃場内で特徴的な土壌水分環境を示す地点(最も乾きやすい地点等)を抽出することも可能である。
  • 心土破砕,暗渠排水等により圃場環境が大きく変化する場合は、代表地点の確認が必要となる。
  • 埋設式土壌水分センサーの設置地点を最終的に決定する際には、その他に、作物の根群域分布、栽培条件(畝・マルチの有無等)、灌水条件(スプリンクラー、ドリップ灌漑等)等の考慮が必要となる。

具体的データ

図1 圃場内の代表地点を抽出する手順,図2 圃場内の表土の体積含水率分布図,図3 小さい順にランク付けされた平方平均二乗誤差,図4 圃場平均体積含水率と代表地点における体積含水率の関係

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(SIP)
  • 研究期間:2016~2019年度
  • 研究担当者:亀山幸司、宮本輝仁、岩田幸良
  • 発表論文等:亀山ら(2019)農業農村工学会論文集、87(2):II_113-II_121